降臨 14
「そら、これで最後だ」
縦に一閃。
細切れになったキングゴブリンの中心、頭から股下にかけて縦に亀裂が入る。
「____」
それをきっかけに、キングゴブリンの身体が音もなくバラバラに崩れ去った。
「……おお、これは面白い」
そのとき、バラバラになったはずの肉片たちがそれぞれ宙に浮かび始めた。
宙に浮いた肉片たちは、パズルのピースを組み合わせるかのように一点に集まっていく。
そして……
「__ハハハハハハハハッ!その程度では我には効かんぞ!」
そのまま、元のキングゴブリンに完全に再生してしまった。
再生力は、先ほどのゴーレムとはレベルが違うらしい。
細かくバラバラにされても再生できる生物など、この世には数えるほどしかいないだろう。
パワー、スピード、そして再生力。
これらを合わせれば、確かに世界に喧嘩を売れるだろう。
しかし……
「そうかそうか。でも、残念だったな」
「は?何を言っている?お前の攻撃は我には通用しない!お前は今から我に殺されるんだよ!」
足に魔力を溜めるキングゴブリン。
右足を中心に地面に亀裂が広がっていく。
「そこまでの力を得たなら調子に乗るのもわかる。だが、運が悪かったな。何故なら__」
そのとき、ポツン、とキングゴブリンの鼻先に水が落ちる。
「な、なんだ?いきなり……」
ポツン、ポツンと一滴ずつだったものが、徐々にザー、ザーと密度を増していく。
「………雨?」
はるか上空にいるヴィサスが呟く。
ヴィサスたちは障壁に守られているので濡れることはないが、外で雨が降っていることは音と景色でわかる。
辺り一面は、この一瞬で大雨とも呼べるほどの水に包まれていた。
キングゴブリンは、いきなりの大量の水に少しだけ困惑する。
「な、何故急に雨がこんなにも……」
そんな中、悠然と空中で佇む人影が一つ。
その者は当然の如く濡れておらず、ただ冷めた瞳でキングゴブリンを見下ろしている。
「…なんだその目は……我を馬鹿にしているのか!?」
「…………」
雨脚がさらに強くなり、辺りからゴロゴロと音が響き渡る。
「__何故なら…妾がそなたを消すからだ」




