降臨 10
「…これは壮観だな」
下を見下ろすと、山の中心が大きくヘコみ、巨大な穴になっている。
その中には、山の残骸が所狭しと散らばっていて、もはや山の原型がない。
「…ハハッ、地図を書き直さないといけないな…」
男もこの惨状を見て、乾いた笑いしか出ないらしい。
今は山があったであろう場所の真上にいる。
崩れる部屋から出るとき、全身に障壁を張ってそのまま天井を真上に突っきっていった。
結果、瓦礫を突き破って外にまで出てこれたのだ。
「……………」
キングゴブリンはどうなっただろうか。
あれだけの質量の瓦礫に埋まれば、さすがに耐えられないか。
昔は、生意気なあいつを叩きのめした後、妾の幹部として重宝した。
だが、実はそれがあいつにとっては屈辱的な事だったなんて。
「…帰るか」
地面に降り立とうとした、その時
ゴゴゴゴ…!
穴の中から地響きが聞こえてきた。
……まさか…
ゴゴゴゴッ!ゴガッ!
「ワハハハハハハッ!久々の地上だな!」
穴の中心からキングゴブリンが勢いよく飛び出てきた。
そのまま、瓦礫の上に着地する。
「…生きていたか。まあ、あれくらいで死ぬとは思っていなかったが」
あいつの姿を見て、少し安心した自分がいる。
そして、安心した自分に気づいて不思議に思った。
何故、妾は安心する?
ちゃんと決着をつけられなかったから?
…自分でもよくわからない。
「さて!まずはあいつらの国から落とすか!」
キングゴブリンがゆっくりと歩き出す。
その方向は妾の…いや、正確には未来の妾の住んでいる国の方角だ。
空にいる妾たちのことには全然気づいていないらしい。
さっきまで話していた妾たちのことを忘れている様子で、もしかしたら精神がおかしくなってしまった影響で知能も落ちてしまったのだろうか?
…まあいい。
このまま、面倒事がどこかに行ってくれるならそれに越したことはない。
妾は、そのままキングゴブリンがどこかに行くのを何もせず見ていた。




