本物の竜 27
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「__うっ…ひっく……うぅ…ひっく…!」
「はいはい、いつまで泣いてるんですか貴方は…」
あれから五分は経っただろうか。
余程自身の発言を後悔しているのか、未だに泣き止まないルミナス。
泣き止むまで頭を撫でてあげるつもりだったのだが、時間が経ちすぎてなんか気が抜けてきた。
もういい加減次にいきたいのだが……
「…もう、顔を上げなさい」
「……うぅ…ぐすっ……」
私の言葉にルミナスはゆっくりと顔を上げる。
そこには、涙と鼻水でグチャグチャになったルミナスの顔があった。
「あーあー酷い顔をして…ほら、ハンカチを貸しますから顔を拭きなさい」
「あ…ありがとう…ひっく!ございます…!」
お世辞にも可愛いとは言えないほど酷い顔したルミナスに、私はポケットからハンカチを手渡す。
それをルミナスは受け取ると、しゃっくり上げながらも顔を丁寧に拭いていく。
(よしよし、目や鼻は腫れて多少赤くなっていますが、だいぶマシになってきましたね)
グチャグチャになっていた顔も、ハンカチで綺麗に拭き取ったので下からルミナスの可愛い顔が出てきた。
少し目や鼻を擦ってしまったのだろう。
若干赤く腫れているが、それもこの子の顔の良さからむしろ色気を感じてしまう。
(……黙っていれば綺麗な顔をしているんですけどね…)
それもこれも、あの変態的な言動で全て台無しにしているのが悪い。
叩かれて喜ぶとか無敵の人か。
もしかしたら、私が気づいていないだけでもっとヤバい性癖とかないよね…?
「はぁ…ずびーっ!」
「あ…………」
私が考え事をしている隙に、あろうことか私のハンカチで思い切り鼻を噛んだルミナス。
スッキリした顔のルミナスとは裏腹に、私のハンカチはデロデロの鼻水まみれに。
「ふぅ……あ、ありがとうございます!メアリー様!」
ずいぶんとスッキリしたのか、清々しい笑顔で私にハンカチを返してくるルミナス。
「あ、ああ…どうも……」
私はそのハンカチを、指先で摘むようにして受け取る。
……え、どうしたらいいんですか?これ。
「__ご主人様?それ、コケにちょうだい?」
「え?」
デロデロのハンカチを渡されて困っていたところに、コケが任せてくれと私に向かって手を伸ばしてくる。
「え…でも、これどうするんですか?」
「後で綺麗にしとくよ!コケ、そういうの得意だから!」
そう言って、得意げに胸を張るコケ。
確かに、普段も家を掃除するのを任せているし、すごくピカピカになっているから得意なのは本当なのだろう。
「そ、そういうことならお任せしますよ?」
「うん!」
私はおそるおそる、摘んでいたハンカチをコケの伸ばしてきた両手の上に置く。
コケはニッコリと笑うと、そのハンカチをそのまま自身のポケットに突っ込んでしまった。
「え、あ、なんでそこに__」
「後で綺麗にしておくね!」
私が何か聞く前に、コケは笑顔のまま走り去ってしまった。
そのまま、ルミナスの元へ行ってしまう。
私が咄嗟に伸ばした手は、虚しく空を切る。
「うわー!お目々もお鼻も真っ赤っ赤ー!」
「う、うるさいー!こっち見るなアホ鳥のくせにー!」
「あー!悪口言ったらいけないんだぞー!このこのー!」
「なんだー?やるかー?かかってこーい!」
そして、目と鼻を赤く腫れさせたルミナスをからかいだした。
ルミナスは恥ずかしいのか、顔を赤くしながら少し悪態をつく。
そんなルミナスに、コケは食ってかかる。
その姿は、普段からいつも喧嘩をしている仲良しな姉妹のように見えた。
(……フフッ、いつの間にかあんなに仲良くなって…)
ほんの少し前まではお互いいがみ合っていたはずなのに、今では悪口を言いながらじゃれ合っている姿は、かつての私の友人二人と重なる。
そんな二人を、私はまるで母親かのような気持ちで二人を眺めていた。
まあ、子供なんて産んだことないんだけど。
ちなみに、ハンカチのことは本人が良いようなので、デロデロになっていることは忘れることにした。




