本物の竜 20
「……なんだ、この空気は?」
私たちの間に流れる微妙な空気に敏感に反応するア・ソコーガ・マルダ・シー。
「……それで、変態は一体__」
「おい、なんでまた変態と言った?我は変態ではないと言ったはずだ。せめて竜くらいはつけろ」
再び私の言葉を遮ったと思ったら、なんとも的外れなこと言うア・ソコーガ……というか、頭の中でもこの名前を言いたくないのだが、どうにかならないのだろうか。
とにかく、変態と呼ばれるのはお気に召さないらしい。
かと言ってあの名前を呼ぶのは絶対に嫌だ。
なので、私は誤魔化すべく作り笑いを浮かべるとこう言った。
「なんで…?それはもちろん、真性の変態であることが分かったからですよ。名は体を表すとはよく言ったものです…なので敬意を表し、心を込めて変態と__」
「その笑顔は嘘だな。その目は軽蔑しているものの目だ」
「__っち」
さすがに誤魔化せなかったようだ。
怪しまれないよう満面の笑みで答えていたつもりだったが、むしろそれが怪しさを助長させてしまったらしい。
それと、表情は作れても目だけは変えられなかったようだ。不覚。
(…ん?ちょっと待ってくださいよ……もしかしてこの竜は、好きであの下品な名前を名乗っている訳ではないのでは…?)
普通に考えたらあんな名前を自らつけるはずがない。
それに、今までのやり取りから察するにだいぶ素直な性格なようだから、もしや過去に自身の名前をつける際に誰かに騙されたのではないか?
そうして騙された挙句ふざけた名前をつけられ、その上その名前の意味を自覚することなく今まで生きてきたことを考えると、無性に憐れに思えてきた。
(もしそうなら、勝手な憶測で軽蔑していたことなります…そう思うと少し申し訳なくなりますね…)
表面上の情報だけで勝手に分かった気になり、軽蔑するなど恥ずべき行為だ。
ここは謝罪も兼ねて、今の名前の意味を教えて改名するよう提案しよう。
まあ…あの名前がいかに下品かを私の口から説明するのは少し心に来るものがあるが、こればかりはしょうがない。
自らの行いを反省し、まずは謝罪しようと口を開こうとした、そのとき。
「何故だ…天上の三神も我が名乗ると決まって皆そんな目をするのだ。一生懸命、三日もかけて考えた力作なのに、一体何が問題だと言うのだ…!」
…………って、お前が自分で名付けたんかーい。
ア・ソ……イケメン(竜)の言葉を聞いてズッコケそうになる身体をなんとか留める。
なんだよ、反省したのに無駄だったじゃないか。
空に向かって慟哭するイケメン(竜)。
私は一体何を見せられているのだろう……
そこに何を思ったのか、イケメン(竜)にある人物が近づいていった。




