本物の竜 15
「正気に戻ったようで良かったです。ここは私に任せて下がっていてください」
「は、はい……」
スターシは私に言われるがまま立ち上がると、フラフラとした足取りで後ろにいるルミナスとコケの方へ歩いていく。
「お、スターシ、やっほー」
「大丈夫ー?」
「あ、貴方たち……」
すでに満身創痍のスターシを暖かく迎え入れるルミナスとコケ。
そんな二人にスターシは安堵の表情を浮かべると、ゆっくりとルミナスたちの方へ向かっていく。
……しかし、あのアホたちがこれで終わる訳がなかった。
ルミナスの口元がニヤリと歪む。
「それにしても…ププッ!見たー?あのスターシの泣き顔!」
「見た見た!」
「……え?」
急にスターシを指差して笑い出す二人。
スターシは何が起きたのか分からず、目を白黒させている。
「パクっと食べられちゃうー!だって!もし私があんな醜態晒しちゃったら、恥ずかしすぎてもう人前に出られなくなっちゃうところだよー」
「恥ずかしい恥ずかしい!」
「「ねー!」」
「あ、貴方たち……!」
顔を合わせて息が合った「ねー!」を披露するアホ二人。
スターシの顔がみるみる内に赤く染まり、こめかみには青筋が立っているのがハッキリ見えた。
「あ、もしかして怒っちゃった?」
「た?」
白々しく首を傾げるルミナスとコケ。
それを見て、ついにスターシの堪忍袋の緒が限界を迎えた。
「……貴方たち!ぜーったいに許しませんからねーっ!」
「うわー!逃げろ逃げろー!」
「逃げろー!」
スターシとアホ二人による追いかけっこが始まってしまった。
全く、何をやっているのか……
だが、あれならスターシもトラウマにならずにすみそうである。
もしかしたら、ルミナスたちはこれを狙っていたのだろうか?
……いや、考えすぎか。
そこまで考えたところで思考を打ち切ると、竜の方へと向き直る。
竜は律儀に待っていたのか、ずっと私たちに視線を向けたまま動こうとしない。
私は深呼吸すると、覚悟を決めた。
「私たちを呼んだのは貴方…で、間違いありませんよね?」
「…そうだ。小さき者たちよ」
私がおそるおそる尋ねると、竜の口が小さく動き返事が返ってきた。
その内容は私の読み通りで、あの咆哮は私たちを呼ぶためのアピールで間違いないようだ。
それと、今の私は普通の声量で話しているが竜にはちゃんと聞こえている様子。
先ほどは本当に気づいていなかっただけなのだろうか?
そして、私が殴ったから気づいたのか?
そんなことを考えていると、身体が倒れそうになるほどの風圧が私を襲ってきた。
竜があまりにも大きすぎるので、口がほんの少し動いただけでもかなりの風圧が巻き起こってしまうのだ。
そして結構な爆音である。
それと……何やら変な臭いもする。
「…っ!そうですか。ならばなんの用で私たちを呼んだのですか?」
「……それは我のセリフだ。我はまだ目覚める予定ではないはずだ。何故我を目覚めさせた?」
「………は?」
何だそれは。
目覚める予定…?
また訳の分からない裏の事情というやつだろうか。
いつもならこういうときにもう一人の私が意気揚々と説明してくれるのだが、こんなときに限っていない。
そして、再びあの風圧が私に襲いかかる。
…………くさっ!ヤバいなにこれ!
臭すぎて別の意味で立っていられないんだけど!
もう気絶しそうなんですけど…っ!




