本物の竜 14
「ああっ!?何をしてるんですか!?」
血相を変えて私に駆け寄ってくるスターシ。
「いやぁ、無視されていると思ってつい……」
「つい…じゃありません!」
「はい…すみません…」
私の軽率な行動に説教するスターシ。
私は素直に謝っていた。
「さすがメアリー様!常人には思いつきすら出来ないことをあっさりとやってのける!そこにしびれる憧れるぅっ!」
「いいぞー!もっとやれー!」
そんな中、煽るようにルミナスとコケかはしゃいでいる声が聞こえてくる。
「黙りなさい!貴方たち!」
「うわー!スターシが怒ったー!」
「怒った怒ったー!」
それを聞いてスターシが二人に怒るが、反省するどころか逆に笑いながら走り回るルミナスとコケ。
それを見て大きなため息をつくスターシ。
すみません、うちの子たちがアホ過ぎるばっかりに……
先ほどの自身の行動は棚に上げ、心の中でスターシに謝罪する。
というか、いつの間にか仲良くなっているな、あの二人。
アホ二人に視線を向けると、今は楽しそうに笑顔で手を繋いでスキップしている。
そんな、反省のはの字も見当たらない二人に、こめかみをピキらせるスターシ。
「貴方たち…いい加減に__」
___ズズゥ……
そのとき、急に地鳴りが響き渡った。
地面が大きく揺れる。
私たちは転ばないようにバランスを取りつつ踏ん張った。
「え?なんですか?いきなり…」
揺れが収まると、スターシが何事かと周囲を見渡す。
私も同じように周囲を見ると、少し不思議な場所を見つけた。
目の前にある爪先の周囲の地面の色が変わっている。
というより、何かを引きずったような跡が残っていた。
……もしかして、動いた?
__グオォォォッ!
そう思った瞬間、頭上からとんでもない轟音が聞こえてくる。
あまりの音の大きさに思わず耳を塞ぐ。
というか、塞がなければ鼓膜が持たない。
その衝撃も凄まじく、空気がビリビリと震え地面もその振動に合わせて揺れている。
私たちは耳を塞ぎながらその場に座り込んだ。
この轟音…そしてさっきの地鳴りに地面の引きずったような跡……
竜が、ついに動き始めたのだ。
「め、めめめメアリー様…!?どどどどうするんですか…!?」
スターシは動揺しすぎてまともに言葉もしゃべれなくなっている。
「おー!揺れる揺れる!」
「揺れる揺れる!」
例のアホ二人は地面が揺れるのが面白いのか、楽しそうに片足でバランスをとる遊びみたいなことをしている。
しかし、これだけでは終わらない。
ゴオォォォォ!
次は空気をきり裂くような轟音が頭上から響き渡る。
思わず空を見上げると、巨大な影がこちらに近づいてきているように見えた。
それはどこからどう見ても、竜の頭そのものだった。
「めめめメアリー様!な、何とかしてください!」
「なんとか?と言われても…」
「メアリー様が殴るなんて暴挙に出たからこうなったんですよ!?責任を取ってください!」
「そうですかね?」
そんなことを言い合っているうちに、竜の頭はどんどん近付いてくる。
そしてついに、私たちの目の前にまで頭が迫ってきた。
「うわーん!もう私たちは死んじゃうんだー!」
スターシは完全に錯乱状態。
ボロボロと涙をこぼしながら死んじゃうなんて叫んでいる。
そんな中、私は近付いて来た竜の頭に視線を向ける。
すると、巨大な竜の目玉と視線がかち合う。
竜は何をするでもなく、静かに私たちを見つめていた。
……敵意は感じられない。
「もしかして、竜も何か話したいことがあるのでしょうか?」
竜が出現したそのとき、最初にスターシが目が合ったといっていたのは勘違いなどではなく本当に城を見ていて、定期的に咆哮を上げていたのは誰かを呼ぶためだった?
「パクっと美味しく頂かれちゃうんだー!身も心も竜の一部になって、一生過ごしちゃうんだー!」
「うるさいです」
パコッ!
あまりにうるさいので思わずスターシの額にチョップをいれる。
「痛い!……ってあれ?私は何を……」
どうやら正気に戻れたようだ。
無理そうなら追加で二、三発ほどチョップしようかと思っていたので良かった。




