本物の竜 13
「これは【メガメガメガホン】といってですねー、これに魔力を込めつつ小さい穴の方から声を出すと、反対側の大きな穴から声を増幅させて出すことが出来るんですよー。その増幅率はなんと…最大で一万倍!」
「い、一万…!」
なんだその単位は。
頭がオカシイんじゃないだろうか。
私の反応に満足したのか、ルミナスは小さく頷くと得意げに説明を続ける。
「しかも!音に指向性を持たせることも出来るので、特定の相手にだけ音を届けることも可能なのです!その場合はさらに音を絞ることになるので声の大きさの最大値は実質一万倍以上にもなり、本来よりも遠くの相手に音を届けることが出来るようになります!」
「な、なんてこったー」
なんか商品説明が始まったのでノリで驚いたフリをした。
完全な棒読みだが、それで満足したのかルミナスはドヤ顔でフンスと鼻息を荒げる。
それにしても一万倍か……
一種の兵器みたいだな。
「__ということで、是非お使いください!」
ポンッと私の手の上に例のメガホンが置かれる。
手の上に置かれたメガホンを見て、その後ゆっくりと顔を上げると、そこにはものすごく期待した顔をしたルミナスがいた。
「……え、これ私が使うんですか?」
「何を言っているんですか!メアリー様のために出したのですから当然です!」
「えぇー……」
まあ、竜と直接話し合おうと言い出したのは私だ。
仕方ないが、私はメガホンを構えると、空の彼方にある竜の頭に向ける。
そのとき、チラッと視線を横に向けると、ルミナスとコケがキラキラした瞳で私を見つめていた。
スターシは少し複雑そうな目で見ていた。
………なんだか恥ずかしくなってきた。
さっさと終わらせよう。
私は息を吸い込むと、メガホンに魔力を込める。
「あのーっ!聞こえますかー!」
かー!かー!かー…かー……かー…………
想像以上に声が響き渡った。
私の声が辺りにこだまする。
チラッと横を見ると、すごいものを見たかのような目で私を見つめるルミナスとコケ。
それと、少し恥ずかしそうにしているスターシが見えた。
かぁぁっと頬が熱くなるのを感じる。
だが、あれだけ大きな音を出したのだ。
きっと気づいてくれ____
……………………
__ると思ったが、全くその気配はなかった。
くそぅ、声量が足りなかったか。
あんなに恥ずかしい思いをしたのに…!
先ほどは声の絞りが甘くて少し拡散してしまったが、今度はさらに意識して絞り込む。
声をあの頭にぶつけるつもりでもう一度メガホンを握り直した。
「スゥー……あのーーっ!聞こえますかーーっ!!」
先ほどよりも圧倒的に大きな音が放出される。
その衝撃で辺りの空気がビリビリと震えるほどだ。
これならさすがにあの竜も聞こえ____
…………………………
しかし、そんな様子は一切なく、竜は反応を示さなかった。
「………………(スッ)」
「え、どうしたんですか?」
私は無言でメガホンをルミナスに返すと、スタスタと竜の爪先へ歩いていく。
一歩一歩地面を踏みしめるたびに、身体から魔力が迸る。
「え…ちょっ、メアリー様?一体何をしようとしてますか?」
「………………(スタスタ)」
嫌な予感がしたのか、スターシは不安そうな声色で私に尋ねる。
しかし、私はそれも無視して竜の爪先へ歩いていった。
そして、手が触れられる距離にまで近づくと、右腕を思い切り振りかぶる。
「……無視するなこのトカゲがーっ!」
ドゴォッ!!!
私は、魔力をありったけ込めて作った拳を思い切り爪先へ叩きつけた。




