降臨 2
「妾は鈍感などではない!そもそも勇者とはたまに出先で会うくらいで__」
「はいはい、わかりました。それで、なんで出てきたんですか?私はもう死にかけで助からないはずですけど」
「……妾は魔王のはずなんだけどな…何故こいつは恐れることも敬うこともしないのか…」
「なんで私自身に気を使わないといけないんですか?いいから、なんで出てきたのか教えてください」
「…まあよい。そのことについては後で話すとして…」
コホン、と魔王は咳払いをして真剣な表情に戻る。
「そなた、一旦妾と入れ替われ。生かしてやる」
「え?嫌ですけど」
「なに!?」
私の返事に、魔王が驚きすぎて目を見開いて口をぽかーんと開けている。
威厳もへったくれもない。
「な、何故だ?死にたくないのではないのか…?」
「まあ、死にたくないのはそうですけど、これは私が選んでやったことですし、それを私だけが裏技みたいなので生き返るのも…それに、なんだか裏がありそうですし」
「…おい、それが本当の理由だろ。でもいいのか?そなたがここで死ねば、どうなると思う?」
そう言って、魔王が自身の横の空間に一つの映像を映し出す。
「え、なんですか、これ……」
そこに映っていたものは、キングゴブリンに殺されかけている二人の映像だった。
「なにこれどういうことですか!?」
「どういうこともなにも、見たまんまではないか?そなたが無責任に倒れているから守っているのだろう?」
「無責任って…だってあのときは_」
「無責任、だろう?そなたは、自身が倒れてからその後どうなるか考えていたか?そなたがやられれば自然とこうなるのは予想できそうなものだが…」
「そ、それは……」
魔王の言葉に、思わず言葉を詰まらせる私。
というか、こいつ私自身のくせに私を追い詰めるなんて、なんて酷いやつなんだ。
「酷いやつとは失礼だな。とにかく、このままではそなたも望まぬ結末を迎えるのではないか?」
…確かに、このままでは私が身を挺して守った意味がなくなる。
「妾ならなんとかしてやれる。どうだ?入れ替わる気になったか?」
「…絶対あの二人を助けてくれますか?」
「ああ、約束するとも。妾は約束のために死ねる女だぞ?」
ドヤ顔で両手を腰に当て、胸を張る魔王。
それによって豊満な2つの双丘が強調されるように揺れる。
見ていて腹立つ。
「…わかりました。けど、終わったら身体は返してもらいますからね!」
「それも構わん。そなたが経験してくれれば、妾も同じように体験できるから退屈しないしな」
そう言って、私の方に近寄ってくる。




