本物の竜 9
「りゅ、竜が復活したー!?」
スターシの話によると、私たちが転移した直後、急に【竜の巣】から大きな振動と轟音が聞こえてきたという。
「【竜の巣】って…ただの名称で実際には竜なんて存在しないのではないのですか…?」
「私もそう思っていたのですが……」
【竜の巣】とは、最北の地とそこから南側を分断するように連なる巨大山脈の総称のことだ。
危険度Cランク以上の魔物が大量に生息し、山脈そのものの標高の高さから、生半可な装備では越えることは困難を極める。
【竜の巣】という名称も、そのあまりに過酷な環境から「もしかしたら竜がどこかに眠っていて、その溢れ出る魔力からこの過酷な環境になっているのでは?」という噂から名付けられたものだ。
でも、あくまで噂は噂。
何やら竜を目撃した者がいるという話も聞いたことがあるが、それも眉唾もので本当かどうか分かったものではない。
それはスターシも理解していたらしく、最初は竜のこととは少しも疑いもせず、ただその轟音と振動を不審に思い、すぐに調査隊を派遣しようとしたという。
しかし、調査隊を派遣する間もなく、【竜の巣】の山頂付近から爆裂音が響き渡り、瞬く間に山頂の一部が吹き飛んでしまった。
その規模はこの城の距離から見ても山頂の一部が無くなったことが分かるくらいの大規模なもので、山頂の一部と思われる破片が街の周囲にいくつか落ちてきた。
幸いなことに、大きな破片が城や街に落ちてくることはなく、小さなものはスターシが元の形に戻した結界に弾かれたことにより、民たちに被害が出ることはなかったのだという。
「山頂が爆発した後は綺麗に無くなっていました。確認はしてませんが、おそらく大きな穴が空いているものと思われます。そして__」
グオォォォッ!!!
「__っ!な、何ですか…?今の音は…」
「あ…また動き始めましたね……」
外から身体をビリビリと震わせるような轟音が響いてくる。
まるで何かの叫び声のような……まさか…!
「お察しの通り、今のは竜の咆哮です」
「あ、あれが……」
「はい。調査隊を派遣しようとしていたら急に咆哮が響き渡り、慌てて外に出て山頂を確認すると、穴の中から巨大な竜の頭が出てきました…あまりの出来事に思わず戦慄する私たちをよそに、その巨大な竜は辺りを探るようにギョロギョロと目玉を動かすと、一瞬こちらに視線を向けました。その瞬間、私はあまりの恐ろしさに腰が抜けてその場に座り込んでしまいました……」
今思えば勘違いかもしれないが、あのときは確かに竜と目が合ったように感じたという。
「それからすぐに私たちは城の中に戻り、即座にルミナスに連絡しました。無理なことは重々分かっていましたが、万が一にでもルナ様がお目覚めにならないかと願ってしまって……追い詰められた私は再びルナ様に縋ってしまったんです…お恥ずかしい限りです……」
落ち込んだように目を伏せるスターシ。
いきなり竜の咆哮を聞かせられ、その上目まで合ったというのだからそうなってしまったとしても仕方ないことだろう。




