本物の竜 8
「__何度も申し訳ありません、メアリー様」
横から声が聞こえる。
そちらに顔を向けると、そこには申し訳なさそうに俯きがちになっているスターシが立っていた。
「別に気にしなくていいですよ、スターシ様。私はルミナスに連れてきてもらっただけで特に何もしてませんから。それで、何があったんです?」
「スターシ、とお呼びください。私に敬称は不要ですよ」
「そうですか?それなら遠慮なく」
「はい。申し訳ないのですが、そのお顔で敬称付きで呼ばれるとムズ痒くなってしまって……」
「ああ…なるほど」
私の顔はルナと同じ。
つまり、スターシからしたらルナに敬称付きで呼ばれているように感じて気になってしまうのだろう。
理の聖女である彼女が、その上司みたいな立場にある月の神に敬称付きで呼ばれたら心情的に気になるのは何となく分かる。
私は素直に、スターシの要望に応えることにした。
「それで、いきなり本題に入って申し訳ないのですが、緊急事態が発生してしまいまして……メアリー様、ルナ様に呼びかけることは不可能でしたよね?」
「ルナに?」
何が起きたのか分からないが、ルナが深く潜る時にそんな事を言っていたように思う。
「はい…ダメだとは重々承知なのですが、試しにルナ様を呼んでみてもらってもよろしいでしょうか?」
「まあ、それくらいなら…」
スターシの切羽詰まった表情に、余程のことが起きたのだろうと察する。
私は試しに、ルナに声をかけてみた。
『……ルナ、聞こえていますか?聞こえるなら返事をしてください』
________
……駄目だ。
いくら呼びかけても反応がない。
というより、気配がほとんどない。
これでは、何度呼びかけようともルナが反応することはないだろう。
「……駄目です。試しに呼びかけてみましたが、全然反応がありません」
「そうですか…そうですよね……」
私の言葉に、すごく気落ちするスターシ。
「えっと…何があったのか聞いてもいいですか?」
「あ、申し訳ありません!何もご説明もしないままお願いばかりしてしまって…!」
私が事情を尋ねると、今まで説明してなかったことに慌てて頭を下げて謝罪するスターシ。
「いえ、気にしていないので頭を上げてください。そんなことより、何があったんです?」
「ありがとうございます…実は、メアリー様たちが転移されて間もなく、とんでもないことが起きてしまったんです」
そうして、私はスターシからことの顛末を聞き、その内容に驚愕することになった。




