本物の竜 2
「さて、それではさっさと帰りますよ。ルミナス、立ちなさい」
「うぅぅ…へ?あ、はい!」
私の呼ぶ声に、痛みで頭を押さえながら座り込んでいたルミナスが、半ば反射のようにシャキッと立ち上がる。
「貴方、時空の聖女なのでしょう?ならば、空間転移は出来ますね?」
「あ、はい!出来ます!ステラ様!」
「よろしい。後、私のことはステラ様ではなくメアリーと呼ぶように。間違えたらお尻百叩きの刑ですからね」
「は、はい!メアリー様!」
私の名前を訂正させると、はじめは罰の重さに沈んだ顔をしていたが、何故か徐々にその顔が恍惚としたものに変わっていく。
端的に言えば、ニヤニヤしていた。
何を考えているんだ?
「……まあ、いいでしょう。コケ、こちらに来なさい」
「はーい!」
コケも呼び寄せ、準備万端。
後は、このルミナスに私の家がある地点を教えれば問題なく転移出来るだろう。
「あ、あの…!メアリー様…!」
「心配しなくても、ルナが戻ってきたら連絡ぐらいは差し上げます」
「あ、ありがとうございます…!」
何やら不安そうなスターシに、一番心配であろうルナについて、表に戻ってきたらすぐに連絡すると伝える。
私の予想は的中したようで、スターシは少し安心したのか、大きく頭を下げながらお礼の言葉を言った。
私は心配りが出来る女。
この程度の配慮、造作もないのである。
「転移地点は……そうですね、私の家は森の中にあるので、近くの分かりやすい所にしますか。ということで、ヘルメス国の東街城門付近でお願いします」
「承知っ!」
ビシッと私に対して敬礼するルミナス。
オーバーサイズの右袖が、頭の横からダランとだらしなく垂れる。
「よろしい。ほら、コケもこっちに寄りなさい」
「はーい!」
ルミナスが私の足元に転移するための魔法陣を展開しだしたので、私はその内側に入るようコケに呼びかける。
コケは私の腰回りに両手を回しながらピッタリとくっついた。
そのタイミングで、足元の魔法陣がパァッと光り輝く。
どうやら、転移の準備が完了したようだ。
私は周囲を見渡すと、別れの挨拶でお決まりの、あのセリフを口にする。
「それでは皆さん、ごきげんよ__」
「ちょちょちょちょーっと待ったぁぁぁぁっ!!」
そのとき、急に大きな声で呼び止められる。




