私が___ですか?何かの間違いでは? 10
『…いや、こうも考えられるぞ。普通なら吸収されるはずが逆に弾かれてしまう。それはつまり、特別な証拠である…と!』
『……さすがにそれはこじつけが過ぎるのでは?』
そんなことを言い出したら、もはや何でもアリである。
だいたいそれだと、これを試すための前提条件から変わってくる。
さすがに無茶だ。
『なんだなんだ!ならメアリーが空間の歪みが見えることや、時空の聖女が反応したことはどう説明する!?』
『さぁ?』
『さ、さぁ…?』
『だって、どうでもいいですし』
私が何なのかなんて、もう気にしていない。
私は私。
私の正体がなんであれ、それは変わらない。
どうせ、力に弾かれたのも私が魔法を使えないのと一緒で、才能が無さすぎるのだろう。
今更気にしたってしょうがないのである。
『ううむ…いや、まだ妾は諦めんぞ…!やっと妹へと繋がる手がかりを見つけたのだ…!』
『そうですか。それはいいですけど、もう力の吸収はやりませんからね』
『うおぉぉぉ!待ってろよ!妹よ!』
『…………はぁ』
何やら火がついてしまったらしい。
私の中で雄叫びを上げると、ルナの精神を中心に星の神の力がいくつも取り囲み始める。
『……メアリーよ。すまないが妾は少しの間こもる』
『こもる?どういうことですか?』
『何か思いつきそうなのだ。これを解決すれば、妾はきっと妹にさらに近づける』
『……なるほど。こもるとはそういうことなのですね』
おそらく、ルナは妹の件を解決するために集中したいのだろう。
ただ、そのためには大量の集中力を要する。
自身に適正が無い星の神の力をいくつも扱うのだから当然だ。
そしてその間は、外には一切干渉出来ない。
『ルナの事情は分かりました。それで、どのくらいの期間そうするつもりですか?』
『そうだな…そんなに長くはないと思うぞ。ただ、妾がいない間不便だろうから、この力の使用権だけ譲渡しておく』
そう言って、私に何やら渡してくる気配がする。
これは……アイテムボックス?
『えっと…いいんですか?』
『なに、使用権を移しただけで力の源は妾のもとにあるから心配することはない。メアリーがアイテムボックスを使っても、これから妾が行うことには影響しないからな』
『それならいいんですが…』
『他にも不便なことはたくさんあるだろうが、そこは時空の聖女に助けてもらうといい。確か時空の聖女も妹の力を変化させた道具をいくつも持っていたはず。妾がいなくとも何とかなるはずだ』
『ええ、分かりました』
すぐに私をめぐってコケと争い出す美少女に助けを求めるのには少し思うところがあるが、ここは仕方ない。
『……いくんですね?』
『ああ。妾がこもっている間は完全に外には出てこれなくなる。仮にメアリーが呼びかけたとしても反応することは出来ない。だが、本当にメアリーに危険が迫った時だけ妾に知らせが届くようにはしておく。そのときは、妾が全て終わらせよう』
『大丈夫ですよ。ルナがいなくとも何とかなります。それとも、私がその辺の奴らにやられるとでも?』
『ハハッ、メアリーは思ったよりおっちょこちょいだからな。油断して薬を盛られたこともあった』
『あ、あれは油断していましたから…!』
『フフッ、まあそういうことだ。くれぐれも油断はするなよ?』
『誰に言っているんですか。私はメアリー。あの月の神の盟友ですよ?』
『ハハッ、確かに言い得て妙だな…』
私の言葉に少しだけ笑うと、ルナは私の中に深く潜り始める。
それも今までの比じゃない。
深く深く…私の手の届かないところにまでルナが遠ざかっていくのを感じる。
『それでは頼んだぞ。妾の盟友、メアリーよ』
その言葉を最後に、うっすらとした痕跡だけを残して、ルナの気配が消えた。
『……ええ、こちらのことは気にせず存分に…』
誰に聞こえるでもなく、私の独り言は私の精神世界で霧散していった。




