降臨
ああ……ここはどこでしょうか……なんだか気持ちいいですね……
「__おい、そこの__」
もしかして、これが死後の世界ってやつなのですか?
だとしたら、結構いいものですね…全然苦しくないですし……
「__おい!__聞い_いる__返__」
なんだかうるさいですね……せっかく人が気持ちよくなっているのに、こんなときに一体誰が……
「おい!聞こえているだろ!返事をしろ!」
「__はっ!え、なに?誰?」
急に目の前から結構なボリュームで声が聞こえてきて、思わず意識が覚醒する。
慌てて目の前に焦点を合わせると、そこにいたのは私だった。
でも、所々違う。
私よりも背が高いし、胸やらお尻やらがムチムチしてて色気がヤバい。
そして、藤紫の瞳の周りにある白い部分が真っ黒に染まっている。
なんというか、大人の私?
「誰とは心外だな。妾はそなた自身だ」
「妾?私?」
「そうだ。正確には、過去のそなただがな」
過去の私?
私の過去は、もっとちっちゃくてプリティでキュートな女の子だったはずだけど?
「違う違う。そうではなくて前世の話だ」
ナチュラルに心を読まないでくれません?
っというか_
「え…?前世ってことは………」
お前魔王か!
「そうだ」
だから心読むなって!
「なんで今さら私の前世がここに?」
「なんで?そなたが勝手に死のうとしてたからではないか。妾はまだ綺麗な景色も美味しいものも味わい尽くしていない。恋人?というやつと一度も遊んだこともない。勇者ができるって言ってたんだぞ?ならば、その前に死ぬのはおかしいではないか」
「え…勇者様そんなこと言ってたんですか?」
「ああ。妾との約束を果たすときにな。魔族が根絶やしにされないようにと約束したのだが…そちらはそなたが興味ないのか分からずじまいだ。妾は、お前が見聞きしたものしか把握できないからな」
「へぇ〜……」
ということは、ずっと私の中にいたということか。
ならばこの場所は私の心の中。
まだ死んではいないということだろうか?
それにしても、勇者様はそんなことを…
まるで、魔王のことが好きみたいじゃないですか?
「その通りだ。今はギリギリ死んではいない。死に直面した今は魂が限りなく不安定になっている。この隙にこうやって会話させてもらっているという訳だ。ここなら、時間も限りなく引き伸ばせるからな。あと、勇者は妾のことなぞどうとも思っとらんよ。妾は魔王だぞ?人間が妾のことを好きになるなど、あり得んよ」
こいつ、また心を…!
…まあいいです。心の中で会話しているから思ったことが全部伝わっているだけでしょう。
今は気にするだけ無駄ですね。
それにしても、勇者様も不憫ですね。
こんな鈍感魔王だと、さぞかし苦労したでしょう。




