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緑の鬼との激闘 9

「いや!いや!いやぁぁぁぁっ!!死んだら嫌です!メアリー様ぁっ!」



私は子供のように泣きじゃくり、叫び声を上げる。


そのとき、メアリー様の左手が、私の左頬を撫でた。



「…ごめんなさい……そしてありがとう…私のために涙を流してくれて……」



かすれた声で目の焦点も合っていない。


もう、まともに見えてもいないだろう。


そんな状態でも、メアリー様は私のことを気遣ってくれる。



「メアリー様……私…っ!__」



「実に呆気ない幕引きだったな」



急に上から声が聞こえてくる。


思わず見上げると、キングゴブリンが酷く落胆した表情で見下ろしていた。



「本気を出したこいつは、この我ですら動きを追うので精一杯だった。これさえなければ、いずれ押し切られていたであろう。ゆえに実に惜しい。特に、お前を助けに行く時は全く見えなかった。あれを我との戦で出されたら負けていただろうな」



だからこそ、最後まで戦いたかったと語るキングゴブリン。



「本気を出させるために部下共をお前たちにけしかけたんだが…せめてもの情けだ。この我がとどめを刺してやろう」



拳をゆっくりと振り上げる。


あの巨大な拳から繰り出される一撃を受けたら、一瞬で潰れてしまうだろう。



「…………邪魔だ。どけ」


「…いやです……絶対にどきません…っ」



必死にメアリー様にしがみつく。


キングゴブリンから発せられる圧力に、恐怖で身体が震える。

が、そんなこと、メアリー様を置いて逃げ出す方が何倍も怖い。


私は、涙と恐怖でぐしゃぐしゃになった顔でキングゴブリンを睨みつける。



「わからんのか?こいつが戦を楽しませてくれた礼にお前たちは見逃してやると言っているんだ。わかったなら早くどけ」


「いやですっ!!!」



絶対に離すまいとより強く抱きしめる。


メアリー様はもう完全に目を閉じ、かすかな息遣いしか聞こえてこない。


そして、私のために身を犠牲にしてくれたメアリー様を置いて、自分だけ助かるなんてできるはずがない。



「俺もだ。こんなところでメアリー嬢を渡すわけにはいかない」



レオン殿下も、キングゴブリンと私たちの間に立って剣を構える。



「……こいつの犠牲を無駄にするつもりか?」


「無駄になんかならないさ。俺たちは、メアリー嬢と共に生きてここを出る。それだけだ」



レオン殿下は、何があろうとも絶対に引かないと決意に満ちた表情をしている。



「…いいだろう。お前たちの覚悟がどれほどのものか、見せてもらおう」



キングゴブリンは振り上げていた拳に力を込めた。


レオン殿下は構えていた剣に炎を纏わせ、受け止める態勢に入る。


私はメアリー様の上に覆い被さり、身を固くして衝撃に備え、ギュッと目を閉じた。






そして、明確な殺気と共に、拳が私たちに向かって落ちてきた。

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