三聖女、一堂に会する 17
「__おいスターシ!いきなり呼び出すとは何事だ!?何も起きてはおらぬではないか!」
あ、あれは……
あの姿は……
「…ん?何故そなたたちもここにいる?」
あの美しい漆黒の髪。
一度見たら忘れられないほど混じり気のない、透き通った藤紫の瞳。
絹のように白い肌。
見る者を魅了する大きく育った双丘。
女性の妖艶さを体現したくびれた腰つき。
スラッと伸びた長い手足。
そして、異常なまでに均整のとれたその美貌。
紛れもない。
あの姿はアタシが追い求めた、メアリー様その人だった。
ただ、藤紫の瞳の周囲の普通なら白色になっている部分が黒く染まっている上に、ここの部屋に入ってくるときのあの口調から、今表に出てきているのはルナの方みたいだ。
……ん?そう言えば、ルナは今スターシに呼ばれたって言ったような…?
「おかえりなさいませ、ルナ様。先ほどまで侵攻を受けていたのですがそれも全て終わり、そのタイミングで三聖女が揃ったのでこうしてご連絡しようと思った次第です。本当は侵攻を受けた時にすぐご連絡すべきだったのですが、その時にはご連絡する手段がなく…申し訳ありません」
「ああ、それはいい。それも含めて新たな魔王とやらの策略だったのだろう。妾もまんまと引っかかってしまった」
アタシが先ほどのルナの言葉に疑問を持っている間に、スターシとルナの間で話が進んでいく。
この話している雰囲気…つい先日知り合ったばかりとは違う、謎の信頼感を感じる。
「んーー?月の神…だよねー?あれ、何故かあの御方の気配を感じる……」
アタシの隣にいるルミナスが、ルナの方を向いて何やらブツブツ呟きながら首を傾げている。
(……月の神………え!?月の神…!?)
ルミナスの呟きの内容を聞いてさらに困惑する。
というか、困惑を通り越してパニック状態だ。
「る、ルナ!?アンタ神様だったの!?」
混乱しすぎて、思わずルナに直接確認してしまう。
アタシの声に反応して、ルナはこっちを向いた。
「ん?ああ、聖女か。って、ここには聖女が三人いてややこしいな。名前は何だったか……」
「イーリスよ!名前くらい覚えときなさいよ!」
「おおー、そうだったそうだった。ならば、これからはイーリスと呼ばせてもらおうか。で、なんの用だ?」
「なんの用?じゃないわよ!アンタ神様だったのかって聞いてるの!」
「なんだ、そんなことか」
「そんなことじゃないわよ!そう言うってことは本当なの!?」
「ああ、かつての話だがな。確かに妾はかつて神と呼ばれていた。だが、今の妾は神などではなく、ただの常人に過ぎない__って、そう言えばそなたに妾の名前を教えていたか?それに神の話もした覚えがないぞ?」
「名前はアンタがメアリー様と出て行った日にレオン殿下が叫んでいたわ!神の話はスターシから聞いた!」
「なるほど、だから知っていたのか。説明した覚えがないから少し焦ったぞ」
「誤魔化さないで!」
「誤魔化した覚えもないのだがな。事実、そうだとしてなんだというのだ?そなたに何か関係あるのか?ん?」
「いや…それは……」
「そなたの言う通り、妾の名前はルナだ。それに、先ほども言った通りかつてこの世の神も務めていた。だが、それだけだ。それ以上でも以下でもない」
「そんな……」
ルナの言葉に、アタシは大きなショックを受けた。
もしルナが魔王ではなく神様だというなら、過去のアタシは神様を討とうとしていたというのか?
聖女は、魔王を討つために存在しているのではないのか?
しかし、スターシとルミナスを見ていると、必ずしもそうではないような気がしてくる。
……聖女とは、一体なんだ?
そのとき、アタシの背後からものすごいプレッシャーを感じた。
思わず振り返ると、そこには完全に表情が無と化したスターシが、アタシに向かってとてつもない殺気を放ちながら立っていた。




