三聖女、一堂に会する 10
「うわわっ!」
「フフッ、驚かせてしまいましたか?このように、微力ではありますが、私は世界を構成する力を一部使うことが出来ます」
目の前で散った火花に驚くアタシを、微笑ましいものを見る目を向けるスターシ。
そして、その雷を見てある疑問が浮かんでくる。
(雷……誰かが使っているのを見たような気が__)
「これと同じように、イーリス様も何か出来ると思いますよ。例えば、初代聖女様は野宿をする際に小さな小屋を創造されたと言われております。試しに、イーリス様も何か創造してみては?」
「え、あ、そ、そう…?」
その疑問について深く考える前に、スターシから話しかけられて意識がそちらに移る。
「はい。例えば、今一番欲しいものを思い浮かべてみるのはどうでしょう?想いが強ければそれだけ成功しやすくなると思いますし、ここは一つ」
「そ、そう?今一番欲しいもの……」
スターシに言われるがまま、今欲しいものを思い浮かべてみる。
(うーん……欲しいもの欲しいもの…とりあえず、ケーキにしてみようかな……)
好きなデザートであるケーキを思い浮かべてみる。
……しかし、いくら思い浮かべてみても、何かが起こる気配はない。
「……やっぱり、何も起きない…」
ケーキどころか、魔力が動く気配もない。
やはり、アタシには創造なんて高尚なことは出来ないのだろう。
「本当の聖女としての力を使うのは初めてですからね。イーリス様、先ほど思い浮かべたものは本当に欲しいものでしたか?」
「え?」
「今、【創造】を成功させる鍵は強い想いです。何よりも欲しいと心から強く願うことで、きっと聖女の力はイーリス様に応えてくれます。さあ、もう一度やってみましょう。今度はより強く、他のことは忘れてそれだけを考えてください」
「え、ええ…?」
「ほら、目をお閉じになって」
「う、うん……」
諦めかけていたアタシに、スターシはもう一度やってみるように説得してくる。
アタシはその勢いに負け、言われるままに瞳を閉じた。
(ほ、欲しいもの思い浮かべろったってどうしたらいいのよ…!気持ちが足りないって…確かにケーキは好きだけど今すぐ欲しい訳じゃなかったけど……)
ムムム、と小さく唸りながら考えてみる。
(本気で欲しいものってことだよね…アタシが欲しいもの……食べ物とかお金とかは欲しいけど絶対ってほどでもないし…何か他に欲しいものってあったっけ?)
他に欲しいものが何か無かったか、過去を振り返ってみる。
もしかしたら、そこに何か攻略の糸口が見つかるかもしれない。
(転生前はよく覚えてないけど、この世界に来た時は理由もわからず喜んでたっけ。けど、それからは初めて家族の暖かさに触れて、家族と幸せになりたいって思うようになって…そのためにレオン殿下に近づいたんだったよね。おかげで酷い目に遭ったけど、そのおかげでメアリー様に出会えた……)
過去を思い出し、幸せだった日々が頭の中を巡る。
(あの頃は楽しかったな…メアリー様に拾ってもらって仕えることになって、ヴィサスとメアリー様を巡って馬鹿やって……それから、メアリー様はどこかにいっちゃって……)
キングゴブリンと和解したあの夜。
メアリー様に毒が盛られたことをキッカケに魔族が奴隷にされていることが明るみになり、ルナが怒り狂って…いや、冷静に国を滅ぼそうとした。
それをメアリー様が止めることと引き換えに、国を捨てることになってしまった。




