三聖女、一堂に会する 6
「……スターシ様は…私たち人間のことを恨んでいないのですか…?」
あ、それ聞いたらマズイのでは…?
スターシの優しげな雰囲気に惑わされ、思わず口にしてしまった様子のヴィサス。
しかし、すぐさまマズイと悟ったのか、急いで両手で自身の口を塞ぐ。
だが、もう遅い。
言葉はすでに放たれている。
「………恨んでいるか、ですか?そんなの、恨んでいるに決まっているじゃないですか」
「ヒッ…!」
先ほどまでの優しげな雰囲気から一変、今すぐ殺されるんじゃないかと思うほどの殺気が全身から放たれる。
それを直接向けられて、ヴィサスは我慢出来ずに小さな悲鳴を上げてしまう。
「……おっと、いけません。確かに人間は憎いですが、それは昔の人間がやったこと。それと今の貴方がたは関係ありませんものね。大変失礼いたしました」
一瞬で殺気が消え去り、元の優しげな雰囲気に戻る。
そして、深々と申し訳なさそうに頭を下げてきた。
「い、いえ……私の方こそ失礼しました……」
なんとか、ヴィサスはその言葉だけ絞り出した。
何度も小刻みに息を吐くヴィサスの今の様子から、極度の緊張状態だったことが窺える。
冷や汗をかいたのか、額から一筋の水滴が顎の方に伝う。
元の雰囲気に戻ったことだし、先ほどの発言は許してもらえたということでいいのだろうか…?
「あ、もしかして今も人間たちがやっている魔族狩りに関わっていたりとかは……しませんよね?」
と、思っていたのも束の間。
再び濃密の殺気がアタシたちの全身を襲ってくる。
「………っ!!」
ヴィサスはもちろん、アタシも思わず首を何度も左右に振る。
それはショーディも、ハルカも同じだった。
「……それは良かったです。もし関係あるだなんて言われたら、いくら恩人様といえど八つ裂きにするしかありませんでしたからね。そうなれば、複雑な思いをするところでした」
またもや、一瞬で殺気が霧散する。
「…っ!はぁっ!はぁっ!はぁっ!」
無意識に息を止めていたのだろう。
アタシたち四人は、殺気が収まるのと同時に慌てて酸素を取り込む。
二度も連続であの殺気を浴びてしまい、冷や汗が止まらなくなっている。
(この殺気…あのときに似てる…っ!)
何ヶ月も前。
メアリー様が目の前から消えた日。
その中にいるルナから放たれた強烈な殺気を思い出す。
今回はそのときには及ばないものの、その中に込められた思いはどこか似ているように感じた。
……もしかして、あのときのルナも目の前にいるスターシと同じ気持ちだったのだろうか…?




