三聖女、一堂に会する 4
「ま、マーシャス王国…!?」
そのとき、隣にいたヴィサスが驚きのあまり声を荒げる。
「ヴィサス…?いきなりどうしたの?」
「いや、マーシャス王国といえばかつて、シャーユ王国を建国した初代勇者様が魔王を討伐した際、一緒に滅んだとされた魔族の国の名前ですよ!」
「え、ええ…っ!?」
マーシャス王国が、かつて初代勇者様に滅ぼされた魔族の国…?
だから聞き覚えがあったのか。
前世の記憶がほとんどなくなってしまったアタシだが、何故かこの世界を模したゲームの攻略情報だけは覚えている。
その数少ない覚えている事の中で、攻略本に小さく載っていたような気がする。
設定資料の中に、かつてマーシャス王国という魔族の国があって、それを初代勇者が魔王を打ち倒した時にまとめて滅んでしまった、と。
「__ええ、その通りです。ここはかつて栄華を極めた魔族の国、マーシャス王国です。が、今はこうして見る影もありませんが」
フフッ、とまるで大したことないかのように口元を隠しながら小さく笑うスターシ。
「あ…も、申し訳ありません!大変失礼な発言、お許しください…!」
その姿を見て慌ててヴィサスは頭を下げる。
ここはいうなれば、かつて人間が滅ぼした国だ。
それをわざとではないにしても、蒸し返し侮辱した発言だと捉えられてもおかしくない。
「いえ、大丈夫ですよ。無意識に口をついて出てしまっただけなのは分かります。それに、私たちの国を救って頂いた恩人様たちなのですよ?このようなことでいちいち目くじらを立てるほど、私の器は狭くないと自負しています」
それに対して、笑顔を返すスターシ。
どうやら、先のヴィサスの発言は気にしていないようだ。
これには、緊張していたのかヴィサスはホッと安堵の息を吐いた。
「そう怯えないでも大丈夫ですよ。私たちは別に貴方がたを取って食おうだなんて思っていません。こちらに来る時に私の部下が申していたでしょう?私たちは皆様を歓迎いたします」
アタシたちの心内を察したのか、優しく微笑みかけてくれるスターシ。
怯えないでもいい……やはり、一目で分かるくらいアタシたちは今ビクビクしているのだろう。
いくら招待されて来た身とはいえ、ここは魔族の国。
この国には当然魔族しかいなく、もし目の前のこの人の機嫌を損ねてしまえば、一瞬で取り囲まれて【You DEAD】となるのは目に見えている。
何をするにしてもおそるおそるになるのは仕方のないことだった。
まあ、一人を除けば。




