三聖女、一堂に会する 2
「申し訳ありません。この国では人間がいないため珍しいのでしょう。後で必ず恩人様たちの事は国民へ流布させますので、それまでどうかご辛抱頂けますと幸いです」
そのとき、先導していた鎧の男、名前は確かフィフだったか。
そのフィフが目ざとくアタシが周囲の視線を気にしているのに気づいて声をかけてきた。
いや、これはアタシだけではない。
ヴィサスもショーディもハルカも。
全員が周囲の魔族を見て驚愕しているのだ。
そして、全員がこう思ったはずだ。
【ここは正真正銘、魔族の国だ】と。
「え、ええ…大丈夫…」
かろうじてそんな返事を返す。
内心グチャグチャで、考えが纏まらない。
本当にこんなところにメアリー様はいるのだろうか?
「ご主人様♪ご主人様♫」
そんな中、一人だけご機嫌なコケ。
メアリー様のことをよく分からないリズムに乗りながら口ずさんでいる。
まあ、こいつは元は魔物だし、しかもその正体は不死鳥だとかいう伝説のおとぎ話に出てくるやつなんだとか。
それのおかげかは分からないが、周囲の視線は全く気にならない様子。
それが魔族であるかどうかも、魔物である自身には関係ない。
こいつを本当の意味で動かせるのは、ご主人様であるメアリー様しかいないだろう。
(……こんなやつ、よく【名付け】とか出来たわよね…正体は不死鳥って話だし、何か深い話でもあるのかしら…)
実はたまたま食い物を探していたら出会っただけで、しかも唐揚げにして食ってやろうとしたらなんか間違って【名付け】してしまったとか、今のアタシには知る由もなかった。
ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー
「__お待たせして申し訳ありません。こちらへどうぞ」
フィフが目の前の厳かな装飾が施された扉を開けて、中へ入るように誘導する。
あれから奇異の視線を向けられながらも街中を抜け、街の中心に建っている風格ある城の中、それもおそらく結構重要そうな部屋の前に来ていた。
もちろん、城の入口である門を守る門番や、城の中を歩いている最中も出会う魔族たち全員から訝しげな視線を向けられて、正直もううんざりしていた。
目的地に着いて、アタシはやっとあの視線から解放されるのかと安堵の息を吐いた。
「…入りましょう、皆さん」
疲れた表情でヴィサスはそう言うと、部屋の中へと歩き出す。
やはりヴィサスもアタシと同じで、周囲の視線がずっと気になっていたようだ。
「……そうだな。これでやっとあの纏わりつくような視線から解放される」
「そうですね。私もなんだか疲れちゃいました…」
ショーディとハルカも同じだ。
しかし、その中で一人だけ違う奴がいる。
そいつはアタシたちの横を走り抜け、一番初めに部屋の中へと飛び込んでいった。
「ご主人様!ご主人様はどこー!?」
そう、例のアホ鳥だ。
あいつだけは一切疲れた様子もなく、颯爽と部屋の中へと入ると、周囲をキョロキョロと見渡す。
アタシたちはその後を追いかけるように部屋の中へと入った。
すると、部屋の入口がゆっくりと音を立てて閉じていく。
その音に反応して入口の方を見ると、部屋の外からフィフがこちらに向かって綺麗に腰を折っている姿が見えた。
そして、その姿が見えなくなるように扉が閉じる。




