追撃隊 マーシャス王国を救う 13
「隊長!あの方たちは人間ですよ!?それを我らの国に招待しては…!」
「何を言う!我らは恩を受けて何もしないなどという恥知らずではない!それがたとえ人間が相手だとしてもだ!」
(………人間?)
少し聞き捨てならない単語が聞こえてきた気がする。
人間……その言い方だと、まるで自分たちは人間ではないかのような…
そう思いながら、視線をコケさんの方に向ける。
すると、コケさんは私に見られていることに気がつくと、不思議そうな顔をしてコテンッと首を傾げた。
(……まさか、魔物が人間の形に変身しているとか…いや、まさかそんな…ね?)
コケさんと同じように魔物が人間の形に変身している…?いやいや、ないない。
コケさんが特別なのであって、魔物が人間に変身するなど本来あり得ない。
そう思い当たり、魔物=人間説は早々に頭の中から破棄する。
それなら他の可能性だが、人間以外に知性や理性があって、国を作るほどの社会性を持ち、言葉を話す種族は…………
「え……それこそ…いや、まさかそんなことが……」
そんな種族は一つしかない。
そう、魔族だ。
「____隊長!」
「__ハッ!」
そのとき、フィフさんの部下の大きな声で現実に戻ってくる。
どうやら考え事のし過ぎで、意識がどこかへ飛んでいってしまっていたらしい。
(……魔族…いや、そんなはずありません。もしそうだとしたら、今目の前にいるのは……っ!)
嫌な想像が頭をよぎり、それを振り払うように頭を振る。
「隊長!そもそも国に招待すると言っても、不死者たちはどうするんです?おそらく、まだ国の周りにいる不死者たちはまだ残っていると思いますよ!」
「む……それもそうか……」
フィフさんと部下が、仮に私たちを国に招待しても不死者がいるから無理だと話している。
(…ほら、もしこの方たちが魔族なら人間である私たちを許すはずありませんし、ましてや国に招待するなんてあるはずありません。きっと聞き間違いだったのでしょう)
魔族狩りなんてしていた人間のことを、されていた張本人である魔族が受け入れるはずがない。
きっと、さっきの言葉は聞き間違いで、招待したい国というのも、何らかの理由でたまたまここに新しく出来た人間の国に違いない。
うん、きっとそうだ。
「__済まない。我らの国に招待したかったのだが、不死者の残党がまだたくさんいるようだ。恩返しは不死者を駆逐した後でもいいか?」
「…え!ええ、大丈夫ですよ…?」
考え事をしている時に急に話しかけられたため、よく考えずに返事してしまった。
「よし!返事も頂いたし、負傷した部下を救護班に任せたら、我々も不死者を駆逐している部隊に合流するぞ!」
「は、はい!承知しました!」
「あ……」
やってしまった。
そうこうしている間に、どんどん断りづらくなっていく。
「……いいの?よく分からない人たちについていっちゃって」
「考え事していて思わず返事しちゃいました…そうしたら、訂正する間もなく行くことになってしまって、しかもあんなにやる気に満ちたところを見せられると断りづらく…」
「はぁ!?アンタ適当に返事したの!?それならさっさと断ってきなさい!」
「え、でもあんなに張り切っているところにやっぱり違いました、なんて言ったら悲しむんじゃ…?」
「いいから!それで何かあったんじゃ遅いのよ!今ならまだ間に合うんだから、本格的に行くことになる前に断ってきなさい!」
「はい……」
イーリスに送り出され、申し訳ない気持ちでいっぱいになりながらも断りを入れに行く。
イーリスの言う通り、未知の場所に準備もなく飛び込むなんて危険極まりないことはしないほうがいいに決まっている。
それがたとえ、相手からの善意の行動であったとしてもだ。
リスクヘッジはしっかり行うべきである。




