スターシは耐え忍ぶ 30
「馬鹿だなこいつ。そう言われて大人しく正体を明かすと思うのかー?」
呆れた様子で我々を小馬鹿にしてくるローブの男。
「くっ…!ならば何故我々の邪魔をする!お前たちに我々を邪魔する理由などないはずだ!」
「……はっ、ほんとにこいつって馬鹿なのか?理由があるから邪魔するに決まってんだろ」
「問答は不要です。さっさとトドメを刺してしまいなさい」
私の苦し紛れにした問いも、ローブの男に鼻で笑われてしまう。
そこに女の方が我慢の限界が来たのか、トドメを刺せと男に指示を出した。
「へいへーい」
指示を受けて、気だるそうにしながら男は右腕を大きく振りかぶる。
すると、男の右腕がいきなり大きく膨れ上がった。
その勢いと大きさは自身が着ているローブを引き裂かんほどで、こうして見ている今もなお、さらに大きさは増していく。
その存在感と威圧感は、見るだけで圧倒されてしまうほど。
「……な、なんだ…それは……」
あれは魔法ではない。
魔法に、あんな身体を異形化させるようなものなど存在しない。
もしあったとしても、魔法で無理矢理あんな風に身体を作り替えてしまえば、二度と元には戻れなくなるだろう。
「は?知らねぇのか?世の中には魔法だけじゃなく、能力っていうのも存在してるんだぜ?」
「す、能力……」
噂には聞いたことがある。
何でも、想像を現実にする魔法とは違い、能力には想像を遥かに超えた力を発揮出来るものがあると。
そして、そのほとんどが生まれながらにして宿っているもので、さらにその力を持つものはほんの一握りしかいなく、能力持ちはお目にかかれるだけでも大変希少なものだと。
事実、話に聞いたことがあるだけで、自分自身今まで一度も能力持ちに出会ったことなどなく、その存在はしょせん伝説に過ぎないと思っていた。
「…こいつ、能力持ちも見たことねぇのかよ。どんなド田舎に住んでんだ?」
「いいから。早くトドメを刺しなさい」
能力持ちの話をされて呆けている我々を見て不思議そうな声を上げる男に、さっさとトドメを刺せと女が急かす。
「わーったよ。じゃ、悪く思うなよ?悪いのは弱すぎるお前たちなんだからな」
ギャハハハ!と不快な笑い声を上げる。
「それじゃ、あばよ。精鋭部隊の諸君?」
男は、自身の身体の大きさとほぼ同じくらいにまで膨らんだ右腕を大きく振りかぶる。
「……申し訳ありません、聖女さま…任務は果たせそうにありません…」
目の前に迫ってくる脅威に、諦めて目を閉じる。
そのとき__
____たたたたたたダダダダダダッ!!
「な、なんだ!?」
急に何かの足音がこちらに近付いてくるのが聞こえる。
男はその音に振りかぶっていた右腕を慌てて下ろすと、辺りをキョロキョロと見回した。
「_____こーこーがーげーんーいーんーかーっ!!!」
ダダダダダダッ!!
ドガッ!!
「どわぁっ!?」
木々の隙間から、急に何かが飛び出してくる。
それは勢いよく男にぶつかると、そのあまりの強さに男は反対方向に吹っ飛んでいった。
「え……」
「な、なんですか…?これは…?」
そのあまりに急な出来事に、我々も隣にいた女も呆然としてしまう。
「__どうだ!このコケの強さにまいったか!まいったなら、今すぐご主人様の居場所を教えろー!」
そう言って、男を吹っ飛ばした犯人は仁王立ちしながら腰に手を当て、ドヤ顔しつつ鼻をフンスッ!と鳴らす。
その正体は……腰まで伸ばした赤髪のツインテールに、紫色のツリ目をしたロリ美少女だった。




