スターシは耐え忍ぶ 22
「こ、これは……」
見たこともないその光景に兵士たちは困惑し、思わず足を止めてしまう。
「足を止めるな!」
そんな兵士たちに私から叱責が飛ぶ。
「足を止めるな!勇敢なる兵士たちよ!希望はもう目の前だぞ!」
私の言葉を聞いて、兵士たちは前を向く。
すると、少し進んだところに不自然に不死者がいない場所があった。
地面から不死者特有の青白い手が飛び出しているのがいくつか見える。
あそこが不死者が湧く地点に違いない。
「あそこが不死者が出現する場所だ!あそこを浄化すれば我らの勝利だ!ゆけ!その手に持つ浄化の剣で不死者を元から断ち切るのだ!」
「う……うおおおぉぉぉぉっ!!」
私の声に反応して、一人の兵士が浄化の剣を片手に飛び出す。
それに続いて、他の四人の兵士たちも次々に飛び出していった。
「そうだ!そこを壊せば我々の勝利だ!勇敢なる兵士たちの力を見せつけてやれ!」
「うおおおぉぉぉぉっ!おりゃあっ!!」
地面にへばりついたまま動かない不死者たちを踏み越え、一番初めに飛び出していった兵士がついに不死者が湧く地点にたどり着く。
そして、走ってきた勢いのまま浄化の剣を地面へと叩きつけた。
「おらぁっ!」
「壊れろっ!」
「不死者ごときが二度と逆らうんじゃねぇっ!」
「◯ねぇぇぇぇっ!!」
出遅れた兵士たちも一斉に地面に浄化の剣を叩きつけた。
__ピカッ!シュウゥゥゥゥ……
____ピシッ…ピシピシピシッ!ドガァンッ!!
その瞬間、浄化の剣が一際輝いたかと思うと、地面へと吸い込まれるように光が消えていく。
そして、地面が地響きと共にひび割れ始めたかと思うと、中心から吹き出すように光が溢れ出してきた。
グオォォォォォォ…………___
溢れ出した光が、周囲の不死者たちを軒並み浄化していく。
「……これで終わったのか?」
兵士の一人がそんなことを呟く。
その頃には周囲の不死者たちは全て浄化され、一匹も残ってはいなかった。
「……あ、光が消えていく」
剣が纏っていた浄化の光が徐々に消えていく。
役目を終え、元の普通の剣に戻っているのだろう。
「…私たちの勝利です!みなさんのおかげで不死者の脅威は去りました!本当にありがとうございます!」
これ以上不死者が出てこないことを確認した私は、兵士たちに労いの言葉をかける。
「いえいえ、我々は職務を全うしただけですから」
兵士の一人が謙遜か、そんなことを口にする。
他の兵士たちも同じ気持ちなのか、全員静かに頷いていた。
「…そんなことはありません。貴方たちはよくやってくれました。本当に感謝しているのですよ?」
「…そこまでおっしゃるなら、何か特別なことを期待してもよろしいので?」
兵士の一人が少し冗談っぽくそんなことを言い出す。
「あ!なら特別休暇が欲しいです!」
「ボーナスも捨てがたい…」
「いっそ、どちらもというのは可能なのでしょうか?」
「はい!はい!聖女様とデートしたいです!」
それに続いて、他の兵士たちも冗談に乗っかるような形で私にリクエストしてくる。
「フフッ、いいでしょう。特別休暇とボーナスを支給します。あ、でも私とのデートは駄目ですよ?」
「やったぁぁぁっ!」
「言ってみるもんだな!」
「何しよっかな!何しよっかな!」
兵士たちは、思いがけない報酬に喜びの声を上げる。
「うぅ…断られてしまった……」
若干、一名を除いて。
「おいおい、まだ諦めるのは早いって!」
「とりあえず今日はパーッと飲みに行こうぜ?」
「俺たちが奢るからさ!」
断られて落ち込んだ兵士を他の兵士たちが慰める。
「……さて、それでは帰りましょうか」
結界を閉じ、討ち漏らした不死者がいないことを確認して、私たちは城に戻るために歩き出した。




