スターシは耐え忍ぶ 15
「な、何故ですか!?過去にもやったことですよ!?何故無理なんですか!?」
実にあっさりと【無理】と言われ、納得が出来ずルミナスに詰め寄る。
「いや、私だって意地悪で言ってるわけじゃないよー?単純に魔力が足りないからさー。昔は魔力をいっぱい持ってる人が何人もいたからみんなで協力して出来たけど、今はどうー?」
「うっ…それは……」
今のマーシャス王国に、過去ほどの力はない。
あの当時は、特に魔力が多い魔族何十人に協力してもらい、それで何とか魔力を用意してさらに時空の聖女の力も借りてやっと城一つを転移させることが出来た。
それが今や当時の魔族たちは年老いてしまい、若者世代は長い平和の影響で魔力があまり多くない。
当時と比べると魔力の総量は六割ほどにまで減少している。
とてもじゃないが、大規模な転移魔法を使うには魔力が足りないのだ。
「な、なら一体どうすれば…不死者はもうすぐ来るというのに……」
私の魔力ももう尽きる。
そうすれば、結界は解け不死者たちがこの城になだれ込んでくるだろう。
そうなれば私も、国民も、全てが終わってしまう。
「……っ!あ…………」
……今、結界が破られた感覚がした。
今はまだ小さな穴程度のようだが、それを不死者たちが体を差し込んで無理矢理広げているのが分かる。
もはや、一刻の猶予もない。
……万事休すか…
「おや?その顔は結界が破られたって顔だねー」
「この…っ!他人事だと思って…っ!」
「まだ手はあるよ」
「……え?」
ルミナスのあまりの言い草に怒りがこみ上げ、思わず詰め寄ろうとしたそのとき、ルミナスが私の言葉を遮るように被せる。
……まだ、手はある…?
「……それは本当ですか…?」
「もちろん。私だってあの御方の残滓は惜しいし、それを手に入れるためならなんだってするよ。そして、今この状況で出来ることは一つ」
「そ、それは…?」
「逃げられないなら倒すしかない。でしょ?」
「た、倒す…ですか…?」
「そう。一匹残らず、ね」
なんと、ルミナスはあの不死者の大群を倒すと言い切ったのだ。
「む、無茶です!今の私たちには不死者に有効な攻撃手段を持っていません!普通に攻撃したところで、すぐに再生してしまいます…!」
不死者にはその特性上、圧倒的な耐久力と再生力が備わっている。
生半可な攻撃じゃたちまち再生してしまう。
「そこで私の出番ってわけー。貸すのにはちょーーっと抵抗あるけどー、その後に報酬があると思えば、まあギリ耐えられるからねー」
そう言って、お腹に付いている大きなポケットの中に手を、パーカーの袖口から出さないまま突っ込む。




