スターシは耐え忍ぶ 12
「こんな非常事態に何を言っているんですか!もう一度連絡してください!」
「いえ、それが…あの言葉を最後に何度連絡しても繋がらなくなってしまって……おそらく居留守をしているんじゃないかと……」
「…あのアマぁ……ふざけたことを…!」
怠け癖もここまで来るといっそ清々しいほどだが、今はそんなことを言っている暇はない。
苛立ちに任せて大きな声で罵ってしまいそうになるが、そこはぐっと堪える。
そして、ある事を決意した。
どうせ、あの女のことだ。
興味のないフリをしつつも、今の私たちの状況は見ているに違いない。
「……背に腹は代えられません。あの件は前向きに考えますから、早く来て__」
「そういうことならいいよぉー」
その瞬間、真上から急に間延びした声が聞こえる。
急いで上を見上げると、そこには逆さまになって天井に脚をつけた女性がいた。
身長はルナ様と同じくらいで私よりも少し大きいくらい。
濃紺色で上から下にかけてグラデーションがかかったオーバーサイズのパーカーを身に着けており、そのあまりの大きさに両手は袖口から見えておらず、パーカーについているフードは重力に逆らって首の後ろにきれいに折りたたまれている。
裾は太腿の真ん中くらいのところまできており、下腹部の部分には大きなポケットが一つ付いていた。
それだけの大きなサイズのパーカーを着ているにも関わらず、それを下からハッキリと押し上げる胸とお尻は強烈な存在感を放ち、この女性のスタイルがいいことをこれでもかと強調している。
パーカーの裾から伸びる生脚はふっくらと肉付きがよく、その吸い込まれるような白さは思わず視線が釘付けになってしまうほど。
脚の先はパーカーと同じ色のヒールが低めのサンダルを履いており、濃紺色のネイルが施された綺麗な爪先がよく映える。
顔も非常によく整っており、綺麗な藍色の瞳にシルバーブロンドの透き通った長い髪は誰が見ても美人であると疑わない美しさを放っていた。
が、しかし、くせっ毛なのか長い髪の毛先はところどころが外側に向かって跳ねており、頭の頂点には立派なアホ毛が一本堂々と鎮座。
綺麗な瞳はやる気なさげにまぶたで半分ほど隠れてしまっている。
表情も気だるげそうで、良く言えばクールでミステリアスともとれるが、あれはきっと本当にやる気がないだけなのだろう。
そんなスタイルが良い無気力系美人が、何故か天井に逆さまに立っていた。




