スターシは耐え忍ぶ 11
「…分かりました。このまま国民の避難を最優先にしつつ、ある方に連絡してください。その間に私はアレの準備をします」
「承知しました!アレということは、連絡する相手は……」
「はい。ただちに時空の聖女に救援要請をお願いします」
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__と、これが、マーシャス王国に不死者たちが攻め込んできている理由、という訳です。
あれから不死者たちはさらに数を増やし、結界に対する圧力も増してきています。
このままではいずれ、私の魔力が尽きてしまい、不死者たちに結界を突破されてしまいます。
「ま…まだですか…?」
「もう少しです!あと少しで最後の転移魔法の準備が整います!これで歩行が不安定な方も全員避難が完了します!」
そして、ここはマーシャス王国の城の中。
その中でも最も重要な場所の一つである、とある部屋。
その部屋の中心には、あまりにも複雑でもはや読み取ることは不可能なほどに広範囲に刻まれた魔法陣が一つ。
さらにその魔法陣の中心には、正座をしながら祈りを捧げる私の姿があった。
ここはマーシャス王国を世界から隠してくれるための結界の中心。
結界を張り巡らせ、それを維持するための要とも言える魔法陣が部屋の中の至る所に刻まれている。
何故そんなところに私がいるのかと言うと、結界の中心に近ければ近いほど魔力効率が上がるため、それに伴って結界の強度と持続性が向上するからである。
そして、苦しげな声を上げつつ祈りを捧げる私に対して、秘書があともう少しだと教えてくれる。
国民たちも自身の脚で城に避難できるのならそれでいいのだが、全員が歩けるとは限らない。
中には病気や怪我、寄る年波などによって上手く脚が動かせなかったり、そもそも歩くことすら困難な者もいる。
そういう方たちにはマーシャス王国の兵士たちに力を貸してもらって大きな広場等に運んでもらい、そこから転移魔法で一気に城の中にまで転移してもらうという方法をとった。
幸い、転移魔法を使える者がマーシャス王国に一組いる。
ルナ様をこの国にお招きする際に転移魔法を使った、例の黒マント五人衆だ。
マーシャス王国には転移魔法を使えるのがその五人しかいないため、酷使するようで申し訳ないが国民たちの安全のためにも今は頑張ってもらっている。
もちろん、後でそれ相応の褒賞は与えるつもりだ。
そして、あれから不死者の数は増え続け、魔力消費が指数関数的に上昇している。
今はもう、意地で結界を維持している状態だった。
「分かりました…ならば、時空の聖女への救援要請はどうなっていますか…?」
「あ…そ、それは……」
「……?」
急に秘書の歯切れが悪くなった。
なんだか、嫌な予感がする…
いや、もしかしたら違うかもしれない。
確認してみるまではまだ確定ではないのだから。
「どうしたのですか…?もったいぶらないで早く教えてください」
「いえ……時空の聖女様とは連絡が取れたのですが……」
「……ですが?」
「……忙しいからNO…だそうです…」
「…………あのクソアマぁっ!!」
やはり奴はクズだった。
普段引きこもりで何も生産することもなく毎日惰眠を貪るだけの存在が、何を忙しいとか抜かしているのか。
面倒くさいだけで大した理由もないのだから、こういう緊急事態のときくらい手を貸してくれたっていいのに…!




