追撃隊 アホな鳥と出会う
「__いや、越えた方が早いだろ!」
「いいえ!ここは他の道を探すべきだわ!あんなところ素直に登ってたら命がいくつあっても足りない!」
「まあまあ、落ち着いて……」
……ごきげんよう。
私の名前はヴィサス・カサンドラ。
シャーユ王国の四大公爵家の一つ、カサンドラ家の長女。
親友で唯一無二の想い人でもあるメアを探すために、シャーユ王国で貴族なら必ず通わなければならないウィーリング学園を無理矢理中退し、それからはヘルメス国へと協力要請をしてなんとかメアを見つけたと思ったら何故か最北端に連れ去られてしまったので、追いかけるべく魔導警察の方々と共にその最北端への道を塞いでいる巨大山脈、【竜の巣】をどうやって越えようかと悩んでいるところです。
……え?話が長いですって?
仕方ありません。
それだけこの短い間にいろんなことがあったということです。
これでも、出来るだけ短くお話したつもりなんですよ?
「だから!そんな時間はねぇって言ってんだろ!?こうしてる間にも取り返しがつかないことになってたらどうするんだ!」
「だからといってアタシたちの安全を蔑ろにしていい訳じゃないわ!無茶をしてもアタシたちが無駄死にするだけで山を越えるどころじゃなくなるだけよ!」
「ああぁぁぁぁ!頭が固い奴だな!俺たちの実力があればなんとかなるだろ!急いだ方がいいことはお前も分かってるんじゃないのか!?」
「それは自惚れってやつよ!そうやって調子に乗ったやつから命を落としていくのがあの【竜の巣】ってところでしょ!?魔導警察のクセにそんなことも分からない訳!?」
「なんだと!?」
「なによ!」
超至近距離で睨みつけ合うショーディ様とイーリス。
どちらもすごい剣幕で、一歩も引く様子は無い。
「まあまあ…どちらの言い分も正しいと思いますよ?だからここは落ち着いて、一旦冷静になりましょう?ほら、美味しいものでも食べれば心が安らぎますよ?」
熱くなっている二人の間に入って宥めるハルカ様。
ハルカ様は手持ちの鞄の中を探ると、二人に干し肉を渡す。
「「……ただの干し肉じゃん!!」」
そう言いつつも二人はハルカ様から干し肉を受け取ると、モグモグと干し肉を頬張る。
その姿はまるでリスのようで、一生懸命頬張る二人を見て優しく微笑むハルカ様。
……ここまでの道程は大変でした。
今は【竜の巣】の近くにある村で宿を借りているのですが、そこに到着するまでに私たちはいくつもの障害を乗り越えてきました。
食料問題…お風呂問題…寝床問題…
そして何よりも驚いたのは、あのハルカ様が男性だったという点です…!
それのおかげでお風呂問題と寝床問題がさらに拗れたと言っても過言ではありません…!
何ですか、あの見た目で男性だなんて。
詐欺ではありませんか?
話し方も女性みたいな話し方ですし、あれは確信犯に違いありません。
……男性のアレって…あのような形をしているんですね…初めて知りました……
しかも、イーリスはハルカ様と幼馴染だと言うのですから絶対このことを知っていたはずです。
……ええ。お仕置きしましたとも。
氷風呂は大変お気に召して頂けたようで、私は非常に満足です。




