創世神話 9
__ガギンッ!
「な、なに!?」
しかし、妾たちに当たる直前に、何か壁にでも当たったかのような音を出して止まる。
「……すでにそこは次元断層で分かたれています…次元の壁を越えられない限り、私たちに触れることは出来ません…」
「ば、馬鹿な!いつの間にそのようなことを…!」
「貴方が私から腕を引き抜いた時ですよ……その瞬間に三つの仕込みをしました…一つ目がこの次元断層…二つ目が私の力を星にばら撒くこと…そして三つ目が……」
そう言いながら、妹が妾の後ろに視線を向ける、
妹が視線を後ろに向けたのを見て、妾も首を回して後ろを確認する。
するとそこには、普段妹が異世界に行くときに通っている空間の裂け目が存在していた。
「……これを使ってください…大丈夫…姉様が通っても大丈夫なように調節はしてあります…ゴフッ…!」
妹が再び血を吐き出す。
身体の傷は完全に治したはずなのに血を吐くということは、もう時間が残されていないということだろう。
「わ、分かった…!行くぞっ!」
妾は妹を抱きかかえたまま、空間の裂け目に飛び込もうと脚に力を込める。
……しかし、そのタイミングで妹が妾の腕を振り払った。
「え、な、なんで__」
そして、妹はあろうことか、妾を空間の裂け目へと突き飛ばした。
「な、なに!?」
突き飛ばされた衝撃で空間の裂け目の中に落ちてしまう。
妹がまだ残されたままだ…!
妾は必死になって空間の裂け目の入口へと手を伸ばした。
しかし、手が届くどころか徐々に空間の裂け目の奥へと飲み込まれていく。
そのとき、空間の裂け目の入口から妹が妾を覗き込むのが見えた。
「な、何故だ!?何故妾を突き飛ばして…!」
「姉様……この空間の裂け目はこのまま落ちていくと私たちが作った星に繋がっています…そして、あの男が姉様に手出しが出来ないよう星にロックをかけました…さすがに元々からある聖女たちは無理ですが、これから新たに星に干渉することは出来なくなるでしょう…」
妾の質問には答えずに、妹は淡々と説明する。
「そんなことはいいから…!早くこっちに来い…!」
「私はもう無理です…だから、姉様だけでも生きてください…」
「な、何を言っているのだ!いいから早く__」
その瞬間、妹の身体が淡く光り始めた。
妹は淡く光り輝く自身の身体を見て、あることを悟った。
「……どうやら、もう限界のようですね…」
「い、嫌だ……こんな形で終わりなど……断じて認めない…!」
「大丈夫です……言ったでしょう?私の力は星にばら撒いたと……きっといつか、また会えます…」
そう言って、妹は胸の中心にある濃紺色の球体を手に取ると、妾に向かって投げる。
妾は咄嗟にそれを受け取ると、そのまま溶けるようにして妾の身体の中に吸収されていった。
「それが私に残った最後の力です…もはや奪う価値もないほどのほんの少しの欠片ですが、それでも何かの役には立つでしょう……それでは、お別れです……」
光りがどんどん強くなっていき、妹を包み込んでいく。
「だ、駄目だ…!妾をおいていかないでくれ…!」
「心配しないでください……私たちはまた会えます…それまでしばしのお別れです……最後に、姉様を守れて本当に良かった………………
姉様…大好きです………______」
そう言って微笑む妹は、思わず言葉を失ってしまうほどに美しかった。
そして、その言葉を最後に妹は完全に光に包まれ、次の瞬間には光の粒子となって消えてしまう。
「ス、ステラァァァァッッ!!」
妾の叫びは異空間へと吸い込まれ、妾の身体とともに消えていった。




