私、公爵令嬢になりました
「__で、あるからして、この学園に入学したからには、貴族として自覚を持ち__」
ごきげんよう。
私の名前は、メアリー・フェリシテ。
勇者が興したとされる国、シャーユ王国を代々支えてきたフェリシテ公爵家の長女。
蝶よ花よと育てられ、公爵家としての教育も施された私は、貴族街道をまっしぐらに突き進む16歳の美少女です。
ん?何故急に自己紹介を始めたのかって?
それは今、王国内の貴族たちが16歳になると必ず入学しなければならない、ウィーリング学園の入学式の真っ最中であり、校長とやらの話があまりに長くてつまらな……長時間に渡り崇高な思想を説かれていましたので、時間を有効に活用して自己紹介の練習をしているのです。
え?崇高な思想の話とやらは聴かなくてもいいのかって?
………まあ、それはそれとして、校長の話が終わったら次は魔力測定をするはず。
魔力の種類と強さを測るもので、これで入学後、さらには卒業後の進退を決定すると言っても過言ではない大事なこと。
…だと、聞いたのですけどそこまで興味ありません。
だって私__
「次、メアリー・フェリシテ!」
おっと、いつの間にか御高説が終わっていたようです。
それでは参らなければ。
席から立ち上がり、壇上に向かって歩く。
壇上にある演台に丸い透明な水晶が浮いているので、それに手をかざすことで魔力の種類と強さを測定することができる。
演台の隣には、魔力を測定したときに内容を精査してくれる魔力測定士が立っていた。
私は演台の前に立つと、ゆっくりと水晶に手をかざした。
「おー?」
「こ、これは!?」
壇上が、まばゆい光に包みこまれていく。
眩しすぎて、光を遮るために思わず顔に手をかざしてしまうほどだ。
しかし…
パキッ!
「…あっ……」
何故か水晶が割れてしまい、光は途中で収まってしまった。