初めて来た懐かしい場所 3
「……え?これ昔のルナなのですか?」
思わず内側の声に反応してしまう。
あれが昔のルナの姿だとしたら……私は数年後ああなってしまうというわけですか?
……いや、色気ヤバすぎません?
「やはり、我らが王の名前を知っているな。王は本当に近しい者にしか名前は明かさぬお方。そして、王の名前を知っているものは我ら以外にはここにはいない。つまり、王以外に王の名前を知る者はいないはずだ」
「……?」
話が長くてよく分からなかったが、つまり魔王であるルナの名前を知っているのは魔王本人の証拠である、と言いたいのか?
内側にいるルナの声に不用意に反応してしまったがために変に勘違いを助長させてしまった。
『……いや、魔王って貴方のことじゃないですか』
『そうだが?』
『いや、そうだが?じゃありませんよ。この人たち貴方の知り合いみたいですよ。何とかしてくださいよ』
『何故だ。妾はもう魔王なぞとっくの昔に止めた身だぞ?すでに世代交代しているだろうし、今の妾は魔族が元気にやっていることを知れただけで満足だ』
先日のシャーユ王国の出来事から、魔族はとっくに滅んでいるものと思っていたルナ。
しかし、こうして滅んだと思っていた自身の国がしっかり存続しているのを見て、いろいろと満足してしまったようだ。
『……って、それとこれとは関係ないでしょう。貴方を訪ねてきたのですから貴方が対応してください』
『う、うむ……だがな……』
『なんですか。何か不都合なことでも?』
『いや……この者たちが妾が知っている者たちなら、ずいぶんと厄介なことになりそうだなと……』
『…?何でもいいですが、遠路はるばる貴方を訪ねてきたのですから、誠実に対応してあげてくださいね。ほら…!』
『あ…!こら何をする!』
ルナの意識を無理矢理表に浮上させる。
それに伴って、私は内側に潜ることにした。
こういう面倒事は、しっかり本人に解決してもらうに限る。




