かつての朋友との再会 27
「……………」
魔力の壁に押し出され、地面を転がっていくイーリスの前に高速で移動する。
転がっていたイーリスは私の足にぶつかると、その場で倒れるようにして止まった。
「うぅ……」
下からイーリスの呻くような声が聞こえる。
本当は、魔力の壁などは使わず、身体強化のみで戦うつもりだった。
魔力の壁まで使ってしまえば、さすがに勝負にならないだろうと思ったからである。
それに、二人の実力なら身体強化のみでも十分だと思っていたところはある。
しかし、イーリスがあまりにも捨て身でくるものだから頭にきて思わず使ってしまった。
私は地面に転がるイーリスを見下ろした。
「……自分の身は大切にしなさいと言ったはずですが?」
そう言うと、イーリスはまたもや口角を少し上げてニヤッと笑った。
「……アタシも言ったでしょう…?こうでもしないと、メアリー様には攻撃が通らないって……」
反省の色は全く見えない。
そうまでして勝ちたいというのか。
「……よく分かりませんね。そこまでして勝たなければいけないほど、この勝負に価値などないと思いますけど」
「……フフッ、メアリー様ならそう言うと思いました…けど、その価値観の違いが、メアリー様に隙を作るんですよ…?」
「?」
何だ?何を言っている?
イーリスの言っている意味が分からず、少し考え込んでしまったその瞬間、イーリスの目に一気に力が宿る。
そして、ものすごい速さで起き上がると、バックジャンプして私と距離をとった。
どういうことだ。今何が起きている?
「今よ!ヴィサス!」
展開についていけず呆けている私を尻目に、イーリスが大きな声を上げる。
……ヴィサス様?
「……よくやりました、イーリス。後は任せてください」
死角から声が聞こえてくる。
声が聞こえてきた方に振り向くと、そこにはものすごく魔力を高めたヴィサス様が杖を構えて立っていた。
……そういえば、イーリスと戦っている間ヴィサス様はいなかったような____
そこまで考えて私はやっといろいろなことに察しがついた。
__イーリスをおとりに使いましたね…!
「今更気づいても遅いですよ。今の私に出来る最強の魔法…ニブルヘイムッ!!」
その瞬間、私の周りの空間が身の毛もよだつほどの極寒の冷気に包まれた。




