追うもの 追われるもの 19
「いけ!ファイアー・ボール!ロック・シュート!」
こちらに走ってきながら炎の球と岩の球をそれぞれ生成し、私に放ってくる。
私はそれを無属性魔法の身体強化で強化した左手で、払いのけるように弾き飛ばす。
「な、なに!?」
自身の魔法が呆気なく弾かれたことに驚く男。
避けられるとは思っていても、まさか弾き飛ばされるとは思っていなかったのだろう。
しかも、左手一本で。
「く…っ!まだだ!」
しかし、それだけでまだ戦意を喪失した訳では無い。
男は、走ってきた勢いそのままに私に斬りかかる。
だが、それも刀身を左手の親指と人差し指で摘むようにして止める。
「ぐっ!このっ!クソっ!なんで動かない…!」
指で挟むようにして固定しているのだが、男は押したり引いたりしてもビクともしない。
なんでも何も、単純に男の両手で押したりする力より、私の指先の力が強いだけだ。
何も不思議なことはない。
私は、男が剣を引こうとしたタイミングでパッと指先を離す。
「あっ!うわぁっ!」
剣を後ろに引こうとした勢いのままに、派手に地面に転ぶ。
「みっともない…実にみっともないですねぇ」
「な、なんだと!?」
「雑魚。あまりにも雑魚。雑魚過ぎて何故あんな大見得を切ることが出来たのか不思議でなりませんね。恥ずかしくないんですか?ププーッ」
「こ…このクソガキがぁーっ!!!」
私の馬鹿にした発言に激昂する男。
急いで起き上がると、やたらめったらに剣を振り回す。
冷静さを欠いているからか全ての攻撃が大振りで、私は剣の腹を軽く払い除けて、自分に来る攻撃だけを的確にそらす。
「クソッ!なんで当たらないっ!?」
「そんな攻撃、いくらやっても当たりませんよ」
剣を払い除けたときの隙をついて、男の足を払う。
「なっ!うわぁっ!」
再び、無様に地面を転がる男。
二度も地面の上を転がり、全身土まみれになっている。
男は、悔しそうに剣を地面に刺して支えにしながら立ち上がった。
「はぁ…はぁ…はぁ…なんで攻撃が当たらねぇんだ…!」
無駄に攻撃し過ぎたせいで、すでに息が上がっているようだ。
あんなに大振りで剣を振りまくれば疲れるというもの。
息が上がるのも当然である。
そんな男の様子を見て、私は呆れて小さくため息をついた。
「はぁ…なんでなんでとそればかり。少しは自分で考えたらどうです?」
「だ、黙れ!」
顔を真っ赤にして再び私に襲いかかってくる。
あんなに恥を晒しまくったこの男にも、まだ恥ずかしいという気持ちが残っていたようだ。




