追うもの 追われるもの 11
「ちょ、ちょっと!落ち着いてください…!」
二人の言い争いを止めようと、ハルカが慌てて間に割って入る。
「そうだぜ。俺たちの目的はここに来た例の女の話を聞くこと。そうだろ?」
ショーディも、さすがにこれはマズイと思ったのか、ハルカを庇うように前に立つ。
スミスは、はぁはぁと荒い息を吐いていたが、二人の言葉を聞いて次第に落ち着いていく。
「はぁ…はぁ……まあ、そうだな。俺としたことが取り乱してしまった…」
冷静さを取り戻したのか、スミスは息を整えると大きく深呼吸した。
「スゥーー………はぁーー………すまないな、迷惑かけた」
「いいってことよ。なあ、ハルカ」
「はい、私たちなら大丈夫です。それよりも……」
スミスは迷惑をかけたと素直に二人に謝罪する。
そして、スミスが落ち着いたのを確認すると、ハルカは加工屋のおじさんの方に向き直った。
そのまま、大きく頭を下げる。
「何度も何度も申し訳ありません。また失礼なことをしてしまって……」
「いや、お前さんが謝ることじゃない。悪いのはお前さんじゃなくて、あっちだからな」
頭を下げながらハルカは、スミスに代わって加工屋のおじさんに謝罪する。
加工屋のおじさんは何でもないと返すと、スミスの方を指差した。
指を差されたスミスは、不機嫌そうに視線をそらす。
「いやぁ、それにしても、あんたほどの人が取り乱すたぁ、珍しいこともあるもんだな!」
「…………ふん……」
カカッ!と笑うショーディ。
それを見て、何も言い返すこともなく顔を背けるスミス。
「それにしても、そこの若いの」
「ああ?俺か?」
「そうだ。お前さん、本当は話せるやつだったんだな。ただの荒くれ者かと思っていたが、見直したぞ」
「な、なんだよ急に…しょうがねぇだろ?昔荒れてたときに周りに舐められないようにオラついた態度をとってたら、いつの間にかそれが染みついちまっただけだ。今となってはあれも素なんだよ」
加工屋のおじさんに、最初の態度と今の様子が違うことを指摘されると、恥ずかしそうにそう語るショーディ。
もしかしたら、そんなに悪いやつではないのかもしれない。
「まあ、それでも剣を抜こうとしたのはいただけないがな」
「うっ……す、すまなかった…頭に血が上ってさ…あれは俺でもやり過ぎだと思ってるよ……」
思い出し反省してるのか、シュンとするショーディ。
筋骨隆々で厳つい見た目をしているが、こう見えてショーディは結構可愛いやつなのかもしれない。




