追うもの 追われるもの 6
「__おいおい、おっさん。早くしゃべった方が身のためだぜ?」
「…はて、いったいなんのことやら……」
加工屋のカウンターを挟んで、おじさんと警察の制服を着た三人が対峙している。
というより、見ているのは警察の三人ばかりで、おじさんの方は相手にしていないのかゴブリンの爪と牙を整理していた。
そんなおじさんの姿を見て苛立ったのか、三人の警察の内の一人である、背が高くてちょっとガタイが良い男がおじさんに対して凄んでいた。
筋肉質で身体は大きく、逆立った赤髪と真っ赤な瞳。
さらに乱暴な言葉と横柄な態度で、結構な威圧感を放っている。
見るからに不良を体現したような、そんな男だった。
「おっさんよ、何か勘違いしてねぇか?俺たちは警察なわけ。その警察が話せって言ってるんだから話すのが筋だろ?」
「話せと言われても知らんのだから仕方ない」
「……おいおい、おっさん。いつも誰のおかげでこの街で安全に暮らせると思ってんだ?」
「それはもちろん、この街の善良な人たちのおかげだとも。少なくとも、こんなところでしがない加工屋のおっさんに凄むような野蛮人ではないな」
「このっ!言わせておけば!」
おじさんの言葉についに堪忍袋の緒が切れたのか、凄んでいた男が顔を真っ赤にして腰の剣の柄を握る。
「そこまでです」
そのとき、橙色の髪をした女が剣を抜こうとした男の手を止める。
その女は小柄な体格で、肩にかかるくらいの長さ橙色の髪。
非常に整った可愛らしい顔立ちをしていて、頭の右側だけ縦に編み込みが入った片編み込みスタイルに、同じく橙色の瞳をした清廉そうな雰囲気をまとった女性だ。
「ショーディ。相手は民間人ですよ。剣を納めなさい」
「だってよぉ、ハルカ。このおっさんが__」
「言い訳は無用です。私たちはこの街を、民を守る警察ですよ。その私たちが守るべき民に剣を向けるなど、あってはいけません」
「…へーい」
粗暴な男は、女に注意されるとしぶしぶ剣の柄から手を離す。
「申し訳ありません。私たちの教育が行き届いてないばかりに」
「いやいや、そちらさんも大変そうだな」
女はおじさんに対して謝罪をすると、おじさんは皮肉を込めた視線を粗暴な男に向けながら謝罪してきた女に労いの言葉を返す。
そのおじさんの言葉に、粗暴な男はムッとした顔を向ける。
「……ショーディ」
「ちっ!わかってるよ!」
それを女は敏感に察知すると、粗暴な男を戒める。
男は苛立ちを隠さず乱暴な言葉を返すが、手を出そうとはしない。
もしかしたら、このハルカと呼ばれた女はショーディとか呼ばれた男の上司なのかもしれない。
そして、この男にはまだ上司の言うことに従うぐらいの理性は残っているらしい。
その二人のやり取りを後ろで黙って見ている男が一人。
身長は見上げるほどに高く、粗暴な男と比べて細身でしなやかな印象を受ける。
黒色の髪に黒色の瞳をしていて、端麗で整った顔をしているが、一言もしゃべらず切れ長の目でジッとこちらを見ている様子から少し怖い雰囲気を感じる。




