追うもの 追われるもの 2
「それでは、いつものところに売りに…ってまたこれですか」
いつもゴブリンの素材を買い取ってくれるお店に向かう途中、酒場を横切るのだが、その入口に大きな掲示板が立っている。
それにふと目を向けると、そこには二ヶ月前から代わり映えしないものが貼られていた。
「私の手配書……まだあるんですね」
そこには、二ヶ月前に見たときと同じ手配書が大きく貼られていた。
手配書といっても、私を犯人として捕まえるためのものではなく、私が行方不明になっているから探してほしい、という内容のものだ。
シャーユ王国では、私は行方不明者ということになっているらしい。
復活した魔王をそのまま放置することも出来ず、かと言って国のメンツ的に魔王が復活したと素直に言うことも出来なかったので、どうにか既得権益者が考えた苦肉の策なのだろう。
それに、元フェリシテ公爵家の令嬢だった私を反逆者にしてしまえば、フェリシテ公爵家の信用を貶めることになりかねない。
国の流通を担うフェリシテ公爵家の信用が失われれば、国の経済は瞬く間に崩壊してしまうだろう。
「まあ、冷たいかもしれませんが私にはもう関係ないことです。行きましょう」
私はもうシャーユ王国から抜けた身。
どんな理由があって私を探していようと、それは今の私には関係ないのである。
とにかく、今はゴブリンの素材をさっさと売りに行こう。
私は酒場の掲示板から視線を外すと、ゴブリンの素材を買い取ってくれるいつものお店に向かった。
「…………情報通りそちらに向かったぞ」
「了解しました。こちらでも確認します」
「__よし、着きましたね、加工屋」
古びた一軒家が一つあり、屋根には【なんでも加工します!】の文字が書かれた大きな看板が掲げられ、入口には扉がなく【加工屋】と無造作に書かれた暖簾が吊り下げられている。
私がよく行く、いつもの加工屋の姿だ。
私はいつも通り、加工屋の入口の暖簾をくぐる。
「今日も買い取りをお願いします」
「ん?ああ、お前さんかい。今日は何個持ってきたんだ?」
「牙と爪を50個ずつです」
私が加工屋の中に入って呼びかけると、奥から一人の初老のおじさんがやる気のなさそうな表情で出てくる。
ここの加工屋の店主で、昔から一人でこの店を切り盛りしているそうな。
二ヶ月前にたまたまこの店に売りに来てからもう四回目になる。
そこまでくると私のこともさすがに覚えたみたいで、三回目からはお前さんと呼ばれるようになった。
それにしても、いつ来てもこのお店はお客様がいないようだけど、経営は大丈夫なのだろうか?
というか、このおじさんいつも暇そうだけど、仕事しているのだろうか?




