精霊と伝説とアホな鳥 41
「え、何ですかこれ。どうなっているんですか?」
『………………』
いきなりのことに焦ってしまう。
何故コカトリスが光りだしたのか。
何故コカトリスの気持ちが分かってしまうのか。
『……はぁ…やってくれたな…』
ルナは何やら呆れた様子。
というより、諦めているような雰囲気だ。
この様子だと、今目の前で起きたことが何なのか知ってそうである。
「何ですか。何か知ってるなら早く教えて下さい」
私は、何か知っているが教えてくれそうにないルナに少し苛立ちを感じる。
こっちは何が何やら分からなくて焦っているのだから、何か知っているならもったいぶらないで早く教えてくれればいいのに…!
私が、抗議の意味も込めて不愛想に聞くと、ルナは呆れたようにまた一つため息をつきながら教えてくれた。
『はぁ…そなたがやったのは名付けだ』
「名付け…?何ですかそれ?」
『読んで字のごとく、魔物に名前を付けることだ。魔物の名前を決め、それを魔物が受け入れれば名付けが完了し、全身が発光する』
なるほど。それであんなに光り輝いていたんですね。
……それで?
『名付けが完了すると、名付けをした魔物とパスが繋がる。繋がったパスを通して魔力を渡すことも出来るようになる上に、感情もある程度共有されるようになる』
「え、感情の共有ですか…?あ、だから嬉しいとかが分かったんですね」
感情がある程度とはいえ共有出来るなら、意思疎通をする上で結構便利そうだ。
相手は魔物だし、言葉が通じなかったら交流する上で面倒なことになるし。
『何を考えてるか知らないが、これが最大のデメリットと言っても過言ではないぞ』
「え?何故ですか?感情が伝わるならこちらがしてほしいことが伝わりやすくて良いのではないのですか?」
『これはそう単純な話ではないのだ。この感情を伝えるというのは、こちら側からは名付けした魔物に対して制限をかけることが出来る。つまり、こちらの感情を伝えたくなければ伝えないことが可能というわけだ』
「はい。伝えたくないものは伝えられなく出来ると。なんですか、別にいいではないですか」
『だが、これはあくまでもこちら側からだけだ。魔物側はそのような制限はかけられない。つまり、魔物の感情はガンガンこちらに伝わってくる』
「え…?えっと……つまり…?」
『……メアリーよ。もしこの鳥を食べようとしたときにものすごく悲しい感情が流れ込んできたとしたら、そなたそれでもこの鳥を食べることが出来るか?』
「そ、それは……」
おそらく無理だ。
なんせ、あの目を見ただけで罪悪感で食べるのを躊躇ったくらいだ。
そこにそんな感情まで乗せられてしまえば、もう食べることなんて出来はしないだろう。




