精霊と伝説とアホな鳥 35
「………………」
『………………』
「私、やっちまいました…かね?」
『そうだな。やっちまったな……』
今、目の前にはリンゴの形をした黄金の果実が三つだけある。
いや、三つしかないと言ったほうがいいかもしれない。
「まさか私があんなに夢中になるなんて……」
今さら後悔してももう遅い。
あれだけあった黄金の果実たちが、たった三つだけになってしまった。
『無理もない。現に妾も一緒になって楽しんでいた。あの果実には食べたものを虜にする魔力でもあるのかもな。だから仕方ないさ』
「…なんの慰めにもなっていませんよ、それ」
『フフ、そうかもな…』
食べてしまったのは仕方ない。
それよりも、今はもっと気になることがある。
「ルナ……私今、ちゃんと老化してます…よね…?」
別名、不老の果実と呼ばれる実をあれだけ食べたのだ。
ただの伝説とは言え、もし効果が本物なら、私は今歳をとらなくなっているはず。
『……………………』
「……………………」
ルナは何もしゃべらない。
今、身体のことを調べてくれているのだろうか。
不穏な空気が辺りを漂う。
沈黙が辺りを支配し、心がざわつく。
もしかしたら…という不安が、私の精神を蝕んでいく。
頬に冷や汗が流れた。
そして、長い時間をかけてついにルナが私に答えを教えてくれた。
『……すまない。今のメアリーの身体は、完全に細胞の劣化が止まっている。あの伝説は、どうやら本物だったようだ』
私が知る限り、最悪の答えだった。
「え……細胞の劣化とはどういう…?というか、私は今不老になってしまったんですか…?」
またもや知らない単語が出てきたが、それよりもルナの反応が気になる。
私は、本当に不老になってしまったのだろうか。
『厳密に言えば不老ではない。黄金の果実の効果が切れれば、また老化が始まるだろう』
「……効果が、切れれば……」
あれだけ食べたのだ。
いくつ食べたのかは分からないが、先ほど見た時は最低でも五十個以上はあったように見える。
「……低く見積もっても、五百年以上はありそうですね……」
いくら果実といえど、普段の私なら三個も食べればお腹いっぱいになっていたはずだ。
それなのに、この黄金の果実に限って言えば、際限なく食べれてしまう。
もしかしたら、黄金の果実にはそういう効果もあるのかもしれない。
今となっては確かめようもないが。




