精霊と伝説とアホな鳥 8
『きゃ、客間はいいとして、他は良かっただろう?』
「まあ、そうですね。まさか逃亡生活でこんなに快適な生活が出来るとは思いませんでした」
私はてっきり、最初はそこらのほら穴に寝泊まりして、ほとぼりが冷めた頃、私たちがあまり知られていない辺境の地に引っ越してからひっそり暮らすのかと思っていました。
それがルナのおかげで、【ケイオス大森林】の未開拓の地でこんなに立派なログハウスに住めるなんて。
「あ、そういえば、各部屋の天井にあるこの光る丸い玉みたいなのはなんですか?」
私は、天井に吊り下がっている発光している丸い玉を指差す。
私たちが普段使っているたいまつや、特殊魔法の【ライト】が込められた魔道具とも違う様子で、ずっと気になっていたのだ。
『ああ、それか?それは電球といってな。異世界にある電気で光る道具だ』
「……電球?……異世界?」
私の知らない単語がいくつも出てきた。
電気とは、嵐のときに落ちるあの雷の源と言われているやつですよね…?
え?この小さな丸い玉が、雷と同じエネルギーで光っているんですか?
一体どういうことなんです?
ルナの説明に、私の頭の中はハテナで埋め尽くされる。
『ん?ああ、そういえばそなたは知らないのであったな。すまない』
そんな疑問符で埋め尽くされた私の雰囲気を悟って、ルナが謝ってくる。
『世界は何もここだけではない。他にいくつも存在しているのだ。妾たちがいるこの世界も、その中の一つに過ぎん』
「えっと……それはどういう…?」
『まあ、理解するのは難しいだろうな。妾も知識だけで、実際に見たわけではない。この電球も、その知識から再現しているだけに過ぎないからな』
どこか懐かしむように語るルナに、私はますます疑問が浮かぶ。
「……ルナ…貴方、一体何者なんですか…?」
『ん?妾か?妾は元魔王で、今はそなたと運命を共にする存在。そなたの知ってる通りのな…』
何でもないかのように語るルナ。
どうやら、ルナにはまだまだ秘密がいくつもあるようだ。
「……いいでしょう。今はそういうことにしといてあげます。けど、いつか必ず話してもらいますからね」
『う、むぅ……』
私がそう詰め寄ると、ルナは少し驚いたような態度を見せる。
『…………いいだろう。時が来たら全て話そう』
たっぷりと間を空けたが、最終的には話してくれると約束してくれた。
今はこれ以上追求しても何も話してくれなそうだし、一旦それで満足するとしよう。
それに私は、前々から気になっていたことがもう一つある。
「はい、今はそれでいいです。それともう一つ聞きたいことがあるのですが__」
コンコン。
そのとき、急に玄関の扉からノックする音が聞こえた。




