精霊と伝説とアホな鳥 2
『恥ずかしいドレスとは失敬な!これは妾を象徴する大切なドレスで__』
「はいはい。そういうのいいですから、服をもとに戻してください。こんな服では動きづらいですし、何より恥ずかしいです」
『………………』
ものすごく不満そうな気持ちが伝わってくるが、しばらくすると服が変化し始めた。
いつも着慣れた、白のリボンブラウスに藍色のハイウエストジャンパースカート。
ウィーリング学園の制服だ。
「って、私学園も退学になってると思うんですけど、これ着ていいんですかね?」
『知らん。そもそも妾は、そなたのその格好以外の服を知らんぞ』
「そういえば……」
学園に入って着ていた服はほとんどコレだったかもしれない。
学園に入る前と言えば、貴族らしい何かしらのドレスを着ていた気がする。
「……まあいいでしょう。誰に見せる訳でもありませんし、制服くらい問題ありません」
気にしないことにした。
ここでいちいちどんな服が着たいか説明するのも面倒だし、ドレスよりかはマシだ。
『…だいたい、妾のドレスに文句をつけるが、この制服とやらも大概ではないか?胸がこれでもかと強調されているぞ』
ルナが不満の声を上げる。
まあ確かに、ウエストを締めるような服の構造上、胸の形がハッキリと分かってしまう。
どうせ、学園のお偉いさんの趣味なんだろうが……
「あのドレスよりはマシです。アレ、胸だけに飽き足らず、腰からお尻まで全部のラインが丸見えではないですか。その上背中はなんです?丸見えどころかむしろ晒してますよ」
あの漆黒のマーメイドドレス。
実は背中側がガバッと大きく空いていて、私のシミ一つない白い肌の背中が完全に露出している。
これでは、見てくれと言っているようなものだ。
『なんだなんだ…!そんなに言わなくてもいいではないか…!妾だって好きであのデザインにした訳ではないというのに…!妾だって本当は…!』
今度は泣きそうな雰囲気が伝わってくる。
どうやら、本人もあのドレスのスタイルには思うところがあったらしい。
言い過ぎただろうか……少し罪悪感がでてきた。
『ふん…っ!どうせ妾は恥ずかしい服を着た痴女だ…!』
ルナが拗ねてしまった。
めんどくさ……じゃなくて、これは私が言い過ぎたせいでもあるし、慰めてあげなければ。
「すみません、言い過ぎました。確かに、あのドレスも素敵でしたよね。女性の魅力を最大限発揮出来る、素晴らしいドレスだと思います」
『………………』
どうだ?少しは響いてくれたか?




