レオン殿下は動揺する
「いや、あれは反則だろう。あんな顔をされたらほとんどの男は落ちてしまう」
シルトたちのところに向かっている最中。
先程の光景を思い出す。
それは、初めてメアリー嬢が俺に向かって笑いかけてくれたときのこと。
あまりにも眩しくて、思わず言葉を失ってしまった。
自然に笑ったときはあんなにも綺麗なのかと、目を疑った。
あれを他の男が見たら、無色なんてことは関係なくメアリー嬢に群がってくるはずだ。
「早く俺のものにしてしまわなければ他の男に…って、メアリー嬢に限ってそんなことはないと思うが…」
他の男に靡くメアリー嬢の姿を想像すると、何故かムカついた。
「…まあ、ないな、うん」
よく考えたらメアリー嬢が男に靡くなんてあり得ないなと、途中で考えるのを放棄した。
「まあ、あの笑顔を見せてくれるようになったということは、多少は心を開いてくれたということだろうな」
その分、遠慮もなくなってしまっているので、下手をすると本当にぶっ飛ばされる可能性もあるが。
距離感には十分に気をつけようと思った。
「これも、シルトが挑発して情報を仕入れてくれたおかげだろう。さっきは、シルトから俺が話を聞いている前提でメアリー嬢は話をしていた」
だからだろう。
今までのメアリー嬢なら、淑女の仮面を外すことなどなかったはずだ。
それがシルトにバレて、その話が俺にも伝わっていると見て淑女の仮面はもう意味がないと判断したんだろうな。
おかげで隙ができた。
仮面を外させたのが俺じゃなくシルトなことに少々思うことはあるが、まあそれはいいだろう。
「問題はこれからだな。何故だか可愛いという言葉に反応していたから、そっち方面で攻めてみるか?」
あの見た目だから言われ慣れていると思っていたが、そうでもないらしい。
それにしても、照れているメアリー嬢も可愛かったな。
《《赤面》》しているときなんて、普通の女の子みたいだった。
「普段が無表情だから余計に際立つな。あれを他の男に見られてたら面倒だった」
まあ、そのときは《《説得》》してご退場願うことになるだけだが。
「とりあえず、普通に仲良くなることから始めよう。変な小細工をしたところで、メアリー嬢には効かないだろうしな」
余計なことはせず、正攻法で確実に仲良くなっていこうと思った。
「お、殿下ー。こっちこっちー」
「おー、今行く」
シルトが呼ぶ声が聞こえたのでそちら向かう。
なんか、ホルンピッグの大きな角を掲げている。
大きすぎて持ち運べないから、小さくするように言おうと思った。




