レオン殿下は勘違いする 5
「こ、これなら……いける!」
イーリス嬢は両手を空の炎の塊に向けた。
「この世を創造せし太陽の神、名はソル。聖女の名において、その大いなる力を我に貸し与えたまえ__」
決闘の時に唱えていた、あの呪文だ。
しかし、後半から少し違うようで_
「我が身に宿りし数多の力。今一つとなりて全てを貫け!顕現せよ!【神の光芒】!」
イーリス嬢の両手から白い光の光線が飛び出したかと思うと、それは瞬く間に大きくなり、そのままイーリス嬢を取り巻く光のオーラ全体へと巨大化する。
「いけぇぇぇぇっ!!!」
巨大な光線は、空の炎の塊に正面から命中する。
「くっ!うぅ……っ!」
しかし、炎の塊の勢いは止まらず、光線を散らしながらこちらに落ちてくる。
イーリス嬢も、苦しそうな表情をしている。
「ぐぐっ…!み、皆さん!もっと魔力を…もっと力をアタシに貸してくださいっ!!」
イーリス嬢の声が辺りに響き渡る。
「聖女様!もっと俺の魔力を使ってください!」
「俺も!」
「私も!」
「限界まで魔力をお渡しします!」
それに反応して、イーリス嬢の様子を見ていた兵士たちが一斉に魔力をイーリス嬢へと渡し始めた。
その魔力の光は、先ほどよりもずっと多く、辺りが真っ白な光で埋め尽くされる。
「うぐぐ……っ!」
そして、次の瞬間に真っ白な光が一気にイーリス嬢へと殺到する。
イーリス嬢の光のオーラがどんどん大きくなっていく。
それに比例して、光線もさらに大きくなっていった。
光線の威力が増し、心なしか空のアレの勢いが落ちたように見える。
しかし…
「うぐ……うぐぅ…っ!」
それだけの強大な魔力を一つの身体で受け止めているイーリス嬢が、苦しげな表情をしている。
あれだけの威力の魔法を放てるだけの魔力だ。
相当な負担を強いているに違いない。
空のアレがどうにか出来るまでイーリス嬢の身体は持つのか…?
一抹の不安が頭をよぎる。
そのとき、ふとルナの方に視線を向ける。
すると、先ほど見たときと同じように無表情で俺たちを見下ろしているルナの姿があった。
そこに、俺たちの邪魔をしてやろうという意思は感じられない。
これだけのことを俺たちがしているのに、何の反応もないのはなんだか不気味だ。
この程度ではどうにもならないと思っているのか…?




