レオン殿下は勘違いする
「ぐっ…!兄上め…!余計なことを…!」
俺の名前はレオン。
レオン・ソル・シャーユ。
シャーユ王国の第二王子にして、次期国王に一番近いと言__って、今は自己紹介をしている暇はない。
兄上がルナの感情を逆なでしまくったせいで、今破滅への片道切符が切られてしまった。
辺りは騒然としていて、生存を諦めた者もいれば、他人に八つ当たりをして暴れる者までいる。
正に、この世の終わりを体現しているかのようだ。
もう、打つ手はないのか……
そう思った、そのとき。
キィィィィン………
ハウリングのような音が聞こえる。
そして……
「……鎮まりなさいっ!!!」
ヴィサス嬢の一喝が響き渡った。
その瞬間、あれだけ騒々しかった兵士たちがピタッと動きを止めた。
全員が、ヴィサス嬢に視線を向ける。
そこからは一瞬だった。
ヴィサス嬢の熱意がこもった激励の言葉に、兵士たちのバラバラだった気持ちが一つになった。
兵士たちの闘志に満ちあふれた雄叫びが、辺りを包み込む。
「…これは……ヴィサス嬢が…?」
そのすぐ後、ヴィサス嬢は空へと飛び上がり、空に向かって魔法を放ちだした。
「私に続きなさい!貴方たちがいかに優れているか、無礼にも私たちに落ちてこようとしているあの不届き者に見せつけてやるのです!」
「ウオォォォォッ!」
「やるぞ!俺はやるぞ!」
「勝利の栄光は我らの手に!」
「「「勝利の栄光は我らの手にっ!!!」」」
兵士たちがヴィサス嬢の号令を合図に、一斉に空に向かって魔法を放ち始める。
「……はは、俺は王族失格だな…」
空から落ちてくる破滅を前に、俺は諦めようとしていた。
しかし、他の者は諦めてはいなかった。
みんなが国を、民を守ろうと必死に抵抗している。
そんな中、俺だけが諦められるはずがない。
「これはヴィサス嬢にお礼を言わないとな…よし、俺も行くぞ!」
俺も空中に飛び上がり、ヴィサス嬢の横に飛んでいく。




