秘密の大作戦、開始! 9
「…なぁ、メアリー嬢。シルトから聞いたぞ。王族とは関わりたくないってな」
レオン殿下がスッと隣に立つ。
基本的について行くだけで暇なのだから、話しかけられるのは必然。
むしろ、シルトがこうなるように仕向けたのでは?と変に勘ぐってしまうほど、今の状況はレオン殿下にとって都合が良かった。
「あら、レオン殿下もお人が悪い。本当はすでにご存知だったのでは?」
「…やはり気づいていたか。メアリー嬢が関わりたくない気持ちもわかるが、こちらにも事情があってな。どうしてもダメか?」
「ダメですね。王位継承戦なんて面倒に決まってます」
「…ダメ、か。随分とはっきり言ってくれるもんだな。メアリー嬢は淑女らしく、曖昧に遠回しに意思表示する人かと思っていたが」
「幻滅されましたか?それなら諦めてくださると嬉しいのですが」
「いや、もっと欲しくなった。俺にここまで堂々と意見できる人間はそうはいない。どうだ?俺ができうる最高の待遇を約束するが?」
「諦めが悪いですね。私のような粗暴者より、ヴィサス様はどうです?淑女の鏡のような方ですし、光以外の属性魔法を全て扱える上、公爵家なので身分も申し分ありません。私より絶対ヴィサス様の方がいいですよ」
「ははっ、自分じゃなくて他の女を勧める奴なんて初めてだな。でも、もう俺はメアリー嬢にすると決めたのだ。なんだろうな、メアリー嬢じゃないといけない気がするのだ」
「…………」
そういうレオン殿下の目は真剣で、本気で私を欲しがってるのがわかって、私は何故かしばらく目が離せなかった。
「…そ、そうですか。まあ、精々頑張るといいです。きっと無駄になると思いますけど」
「ああ、一度決めたらしつこいからな。メアリー嬢も精々覚悟するんだな。絶対に振り向かせてみせる」
「…ふふっ、そうだといいですね」
「…あ」
私の顔を凝視するレオン殿下。
「ん?どうされました?」
「いや、初めて俺の前で笑ってくれたと思ってな。やはり可愛い」
「か、かわっ!?…ふ、ふん!そう言って籠絡しようとしても無駄ですからね!その程度では落ちませんから!」
「おや?結構効いているみたいだが?」
「そんなことはありません!これ以上しつこいとぶっ飛ばしますよ!」
「ははっ、淑女とは思えない発言だな。ぶっ飛ばされては敵わないから少し離れていようかな」
「そ、そうです!あっち行ってください!」
「ははっ、わかったわかった」
そう言って、レオン殿下はシルトたちの方に向かって行った。
あっちもすでに戦闘が終わって角などを回収しているみたいで、それを手伝いに行ったみたいだ。
それにしても急に可愛いだなんて、今まで生きていて…ううん、前世から含めても初めて言われてしまった…。
思わず動揺してしまったが、どうせ深い意味なんてないだろう。
動揺するだけ無駄だ。
それにしても、何故か顔が熱いな、私。
早く冷めないかな。




