アタシが別のアタシになった日 20
__キィィィィン……
そのとき、空中にあった光の球体が、甲高い音を立てながらゆっくりと地面に降りてくる。
そして__
シュワァァァァ__
光の球体は、空気に溶け込むかのように消えていく。
そして、その中には見知った二人の姿があった。
「イーリス!おばさん!」
ボクはたまらず駆け寄った。
光の球体から解放された二人は、ゆっくりと地面に横たわる。
イーリスはどうやら気を失っているだけみたいだ。
よかった。
そして、おばさんの方は……
「……傷が…全て治ってる……」
さっきまであったはずの傷が、一つ残らず綺麗さっぱり消えている。
それどころか、着ていた服でさえ綺麗に元通りになっていた。
……胸がゆっくりと上下に動いている。
さっきまで無かったはずの呼吸が戻っていた。
今はただ眠っているだけのようだ。
「これが…聖女の力…」
おばさんはもう手遅れだった。
息も止まり、心臓も動かなくなってしまって、もう助かる見込みなどなかったはずだった。
それなのに、今は完全に息を吹き返している。
これが奇跡の力……
「おぉ……これが奇跡の力…!建国神話は本当のお話だったのですね…!」
救急隊の人たちは感動している。
確かに、おばさんが助かったことは喜ばしいことだ。
何よりも、嬉しいことだ。
でも、ボクは心配なことが一つあった。
「イーリス…これからどうなっちゃうの…」
聖女の力に目覚めたイーリスをみんなが放っておくはずがない。
きっと、これから大変な目に遭うに違いない。
……そのとき、ボクはある決断をした。
「…必ず助けになるからね、イーリス…」
ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・
「……う〜ん…あれ、ここは…?」
微睡みの中から目覚めたアタシは、訳がわからず目を擦りながら身体を起こす。
…え?ここ地面?
「お、起きたぞ!」
「聖女様がお目覚めになられた!」
「…え?聖女様?」
周りからそんな声が聞こえてきて、アタシは思わず辺りをキョロキョロと見回す。
すると、何故だかたくさんの人たちで囲まれていた。
しかも、どこかから叫び声のようなものも聞こえる。
ものすごい熱気だ。
「え、何これ…?アイドルか何かでもいるの…?というか、なんでアタシこんなとこで寝て……」
そのとき、おぼろげだった記憶がはっきりしてくる。
……そうだお母さん!
アタシは急いでお母さんを探す。
すると、すぐ近くでお母さんが救急隊の格好をした人たちに担架に乗せられているところを発見した。
足がもつれながらも慌ててお母さんの元に駆け寄る。




