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公爵令嬢は、元魔王です?  作者: ゆー
本編 15
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アタシが別のアタシになった日 14

「お母さん…お母さんどこ…?」



アタシは、人だかりの中を彷徨(さまよ)うように進む。


そのまま右往左往と進んでいると、ついに人だかりの中を抜け出すことに成功した。


そこは、ある場所を中心に人がまるで円を作るように囲んでいた。


その中心には、人が一人横たわっている。




__お母さんだ!




アタシはそう確信すると、小走りでお母さんの元に駆け寄る。


すると……




バチャッ!




「何?何か踏んだ?」



何か水たまりのようなものを踏んでしまったらしい。


勢いよく踏んだ水が跳ね返って、アタシの身体を濡らす。



「何これ?口の中に入っちゃった……鉄?」



跳ね返った水が顔にまでかかってしまい、思わず口に入ってしまう。


そのとき、口の中に独特な鉄のような味が広がった。


顔についた液体を手で(ぬぐ)い取る。



「これ……血?」



手が真っ赤に染まっている。

そしてこの鉄のような独特な匂い。


足元を見ると、そこは血溜まりが出来ていて、アタシはそれを勢いよく踏んづけてしまったらしい。


そして、その血溜まりはある方向からずっと流れてきている。


その方向を目で追うと、それはこの人だかりの中心。




アタシのお母さんがいるところだ。




「……っ!お母さんっ!」



アタシは嫌な予感がして、血が跳ね返るのを気にもせず、足がもつれながらもそのままお母さんの元まで走り抜ける。



「お母さんっ!お母さんっ!!」



横たわっている人のところにたどり着く。


そこにいたのはやはりお母さんだった。


アタシは、横たわっているお母さんを抱きかかえた。



「……あら、イーリス……良かった…無事で……」



蚊の鳴くような声でしゃべるお母さん。


目はかろうじて開いているが、焦点がどこにも合っていない。


もう、目は見えていないのだろう。



アタシは、お母さんを強く抱き寄せた。



「お母さん!アタシは無事だよ!だから気をしっかり持って!」


「イーリスが無事なら良かった……ハルカ君も大丈夫だった…?」


「ハルカも無事だったよ!だから__」


「良かった……二人を守れて……」



そう言って、お母さんはかろうじて開いていた目さえも閉じてしまう。


呼吸も、心なしかだんだん小さくなっているように感じる。

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