アタシが別のアタシになった日 3
「……なによ、起きてるなら早く支度しなさい。朝ごはんはもうできてるから」
扉を開けた先に立っていたのは、やはりアタシが知らない女の人だった。
でも、相手はアタシのことを知っているみたいだ。
女の人はアタシに声を掛けると、扉を閉めてそのままどこかに行ってしまう。
どうやら、朝ごはんの準備ができたのでアタシを起こしに来てくれたらしい。
……ん?何かあの女の人、どこかで見たような…?
よく分からないデジャヴを感じたまま、とりあえず言われた通り準備することにした。
…まずは、近くにあるクローゼットを見てみよう。
ベッドから降り、クローゼットに近づく。
なんだか、身体の感覚が違う?
手足が短い…?目線も低いような……
というか、胸が軽くなったような気が……
事故で何か変わったのかな?
すると、クローゼットの横に姿見が置いてあったので、何の気なしに姿見を覗いてみる。
「な……なんじゃこりゃあぁぁぁぁっ!!」
そこに映っていたものは、アタシがよく知る姿ではなく……いや、ある意味アタシが何よりも誰よりも知る姿が映っていた。
まず、アタシは真っ白で胸元にピンク色のお花の刺繍がワンポイントついた、膝下丈のワンピースを着ていた。
全体的に華奢な体つきで、胸は少しだけ、だが確実に女の子としての膨らみを主張している。
腰回りは本当に筋肉が付いているのか疑わしいくらいに細く、それと同じくらいに小さいお尻。
肩にかかるくらいの長さの内巻きにカールしたラベンダー色の髪。
同じくラベンダー色のタレ目気味な大きくてクリクリした瞳と、スッと通った綺麗な鼻筋、薄く形の整った唇が華奢な身体と相まって、全体的に幼く守ってあげたくなるような可愛らしい女の子だ。
そう。
アタシが親の顔よりも見た姿がそこに映っていたのだ。
「……っていうか…アタシ聖救のヒロインのイーリスになってるぅぅっ!」
なんだか分からないが、どうやらアタシは【聖女に転生したから世界を救います。〜救済は聖女とともに〜】
通称、聖救のヒロイン、イーリスに転生してしまったみたいだった。
ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・
「お、お待たせー……?」
近くにあったクローゼットとタンスの中を適当にあさくって、中にあった服に着替えてきた。
イーリスの……というか、今はもうアタシがイーリスなのか…
それで、イーリスであるアタシの象徴とも言える頭より少し大きめのリボンを頭の後ろに付けているのだが、このリボン、クローゼットの中にあるタンスの中にこれでもかと詰まっていた。
いくらこのヒロインの象徴とは言え、それを見たときはさすがにドン引きした。
服はゲームでよく見た、村娘の格好。
白色のブラウスに、赤色のコルセットスカート。
というか、これも色違いで同じものが数着あるだけだった。
このヒロインは自身の格好にどれだけ無頓着だったのか。
それでも様になっているのだから、やはり可愛い見た目は偉大だ。
それからアタシは、自身の部屋を出ると、ゲームをプレイした記憶を頼りに家を探りながら歩き回る。
すると、皆が待っているであろうリビングの扉を見つけたので、おそるおそる扉を開けた。




