天罰 5
「ぐぅっ…!あ…!そうだ!メアリー嬢…メアリー嬢はどうした!?」
そのとき、思い出したかのようにメアリーの名を叫ぶ男。
しかし、その呼びかけに反応する者は誰もいない。
「……無駄だ。メアリーに盛った惚れ薬の効果に期待したようだが、妾が同胞を手にかけてからは完全に大人しくなっている。あの時とは違い、お前に何をしてもメアリーが邪魔をすることはない」
「ぐっ…!クソッ!メアリーといいあの奴隷二匹といい…!肝心な時に役に立たんやつらだ…っ!」
男は悔しそうに地面を叩く。
たが、妾にはそれよりも気になることがあった。
「……二匹?役立たず?」
「「…っ!!!」」
妾から発せられる圧力がさらに増す。
「……ブクブク…」
兵士の中には、ついに泡を吹いて倒れだす者が出てきた。
というか、ほとんどの人間が空の小さな太陽を見て呆然としながら膝をついている。
中には、その場でうずくまって震えながら頭を抱えている者もいる。
もう生き残れる可能性など無いに等しいこの状況で、通常の精神状態を保っている者はもはやいないだろう。
「……メアリーのことといい、さらに魔族のことを匹などと…その上自分だけは助かりたいなどとほざき、挙句の果てには無理矢理奴隷にしておいて役立たずだと…?やはり人間は愚かなのだな…」
妾の顔から表情が、感情が消える。
「ちょっ…!ま、間違えただけだ…!話を聞いてくれ…!」
「……………………」
妾はレオンの言葉を無視し、空に向けていた人差し指をレオンたちに向ける。
そして、静かにこの魔法の名を口にした。
「____アマテラス____」
その瞬間、空が鳴いた。
王城を超え、山ほどの大きさもある圧倒的な質量が、空気を切り裂きながら真下へと落ちてくる。
その光景を下から見上げている人間たちは、口々にこう言った。
「まるで、天が落ちてくるようだ」と。




