約束 10
〚…魔王様……最後にお願いがあるの……〛
「な、なんだ?最後とは言わず、なんでも言っていいんだぞ?」
悲痛に満ちた声で最後のお願いと言うキュルトス。
またもや嫌な予感がする。
__ピシッ!
そのとき、あの嫌な音が聞こえてくる。
首輪に亀裂が入る音だ。
「な、なんだ!?今度こそ妾は何もしてないぞ!魔法も使っておらん!」
〚…もう、限界がきたの……〛
「限界……?」
〚そうなの…最初は魔王様の魔法に拘束された瞬間、捕まったと判断されて首輪が自壊しようとしたの。でもそのおかげで、意識を抑え込む力が弱まったから今こうしてテレパシーで会話できているの。魔王様に攻撃しなくなったのも、キュルトスたちに命令を遂行させる力が弱まったおかげなの〛
つまり、妾がイーゴとキュルトスを不用意に魔法で捕まえたから首輪が自壊するということか…?
そして、中途半端に壊れたおかげでキュルトスたちの意識が少しだけ復活し、身体は動かせないがちょっとした魔法を使うことは出来ると…
それで今、妾と会話出来ているということなのか…?
〚首輪の自壊も完全に止まっている訳じゃないの。今はキュルトスが一生懸命抑えてるだけ…それはイーゴも同じだと思うの。けど、それももう限界…抑えきれなくなってきたの……〛
ピシピシッ!
あの嫌な音が徐々に大きくなっていく。
〚だから最後のお願いなの。魔王様……最後は魔王様に送ってほしいの…〛
キュルトスから懇願される。
送ってほしい…?
それはまさか……
「妾にそなたたちを殺せというのか!」
〚お願いなの。こんな冷たい道具に殺されるんじゃなくて、魔王様に温かく送ってほしいの。それはきっと、イーゴも同じ気持ちなはずなの〛
「ぐぅっ…!しかし…!」
ピシッ!ピシピシ!
そうやって悩んでいる間にも、首輪の亀裂は広がっていく。
〚…っ!魔王様!もう時間がないの!早く…!〛
「くっ!もう…それしか手はないのか…!?」
〚魔王様…!〛
「コロ……シテ……ハヤク…コロシ…テ……」
「!」
そのとき、聞こえないはずの声が聞こえてきて、思わずキュルトスの口元を見る。
すると、キュルトスの口がゆっくりとだが動き、声を出していた。
口だけとはいえ、ついにキュルトスの想いが魔道具に打ち勝ったのだ。




