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公爵令嬢は、元魔王です?  作者: ゆー
本編 13
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約束 9

「……まずはそなたたちを隷属の首輪とやらから解放しよう。(つぐな)いはその後にするから__」


〚ダメなの〛



そのとき、キュルトスがそれは駄目だと妾の言葉に重ねる。


先ほどよりもさらに諦めた悲しい声で、妾は思わず驚いてキュルトスを注視してしまう。



「__駄目?何が駄目なんだ?」


〚……この首輪はね、壊れると同時に装着した奴隷の精神も一緒に破壊する仕組みなの…〛


「なっ!?な、ならば術者を消せばそれで__」


〚それもダメなの。奴隷から見てご主人様にあたる人が死んじゃっても、一緒に死んじゃうの〛


「ぐっ!それならば術者に解かせればいい…!術者が解放すればさすがに__」


〚この首輪にそもそも解放なんてものはないの。首輪をつけられた奴隷は、ご主人様の言うことをなんでも聞かなきゃいけない。そして、もしご主人様以外の人に捕まったら……首輪が自壊して精神を壊し、相手に奪われないようにする…それが一生続く。そんな仕組みなの〛


「な、なんだそれは!それではもう……!」


〚そう…この首輪をつけられた時点で、もう助からないの……〛



声が完全に諦めている。


すでに何とか解除できないかと足掻(あが)いた後なのだろう。


そして、それがもう叶わないことなのだと悟ってしまっている。



〚キュルトス…奴隷になっちゃってからはいっぱい悪いことしちゃったの……魔族を捕まえるためにいっぱい傷つけちゃった……何人もキュルトスと同じ首輪をつけさせられた……何人も…何人も……っ!〛



自分の意思では動けないはずのキュルトスの瞳から、涙が一筋こぼれる。



魔道具の力を、一瞬だけとはいえ上回るほどの悲痛な叫び。


その声だけで、キュルトスの壮絶な苦しみが伝わってくる。



「キュルトスのせいではない!そなたは命令されただけだ!やりたくてやった訳ではない!」


〚でも…!そうだとしても……キュルトスの手でやったことには変わりないの……今でも思い出せる…キュルトスが首輪をつけるときの魔族の顔……絶望に歪んでた…!それをキュルトスがやったの…っ!もう元に戻せないのっ!!〛


「く…っ!」



妾を圧倒するほどの感情の激流。


それが、テレパシーを通じて妾に流れ込んでくる。


その圧倒的なまでの悲しみと後悔は、妾ですら簡単には受け止めきれないほど。


油断すれば、その悲しみに飲みこまれてしまいそうになる。



頭を左右に振って、気をしっかり保つ。

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