レオン殿下は焦る 2
「__殿下……レオン殿下!」
「その声は…ヴィサス嬢か!」
「アタシもいますよ!」
「イーリス嬢まで…!」
俺に馬に乗って走りながら近づいてくる者が現れる。
ヴィサス嬢とイーリス嬢だ。
ヴィサス嬢が華麗に馬を操り、その後ろに引っ付くようにヴィサス嬢の腰に手を回しているイーリス嬢。
二人共、今起こっていることが何となくわかっているのだろう。
表情は真剣そのものだ。
おそらく、メアリー嬢のもとに駆けつけるつもりなのだろう。
しかし……
「この先は危険だ!今すぐ引き返せ!」
「レオン殿下!レオン殿下が心配なさるお気持ちは十分に分かるつもりです!しかし、ここで私は引く訳にはいかないんです!行かせてください!」
「しかし…!」
「レオン殿下!」
「…っ!イーリス嬢…!」
そのとき、イーリス嬢が真剣な眼差しで俺の方を見てきた。
その目は、以前のような邪まで色欲に満ちた瞳じゃなく、何かものすごく訴えかけてくるような力強さを感じる。
思わず、少し気圧されてしまう。
「レオン殿下。あの王城から聞こえる音は魔王の仕業ですね?」
「いや、それは……」
「アタシはこれでも聖女です。魔王の力くらい感じ取ることはできます。そして、相手が魔王であるならば、聖女の力も絶対必要となる…違いますか?」
「う、うむ……だがな…」
確かに、魔王の天敵である聖女の力があれば、魔王を抑え込むのに有利だろう。
上手くやれば、そのまま討伐できるかもしれない。
ただ、いくら魔王といえど相手は……
「分かっています。アタシがそのまま魔王を滅してしまわないか心配なのですよね?その必要はありません。ちゃんと手加減はしますので」
「…っ!な、何故だ?」
「アタシ知ってますから。魔王がメアリー様だってこと」
「っ!?」
何故イーリス嬢がそのことを知っている!?
あれは国家機密に相当するもので、絶対に誰にも話さないようにしっかり口止めしたはず。
…誰か金に惑わされて情報を売ったか?
いや、俺の周りにはそういうことをするやつは一人もいないはず。
この俺が直接見て選んでいるんだ。
間違いはない。
ならば、自力で気づいたことになるが…
メアリー嬢め。
気づかれるようなヘマをしたな?
しっかりしているようで抜けているところが結構あるからな。
まあ、そこが可愛いところでもあるのだけど。
今回は、おそらくそのせいだろう。
(ほとんど正解)