レオン殿下は焦る
ドゴォォ……ドゴォォォ……
「クソッ!城はまだか!」
俺の名前はレオン。
レオン・ソル・シャーユ。
シャーユ王国の第二王子にして、次期国王に一番近いと言われている。
もちろん、王子という肩書に甘えることなく、日々努力に勤しむことは忘れない。
人間、楽を覚えるとすぐにそちらに逃げてしまうからな。
そして今は、馬に乗って王城までの道をひたすらに駆けている。
ドガァッ!ドゴォォッ!
再び破壊音が響いてきた。
先ほどから聞こえてくるこの音は、王城が破壊されている音だ。
「殿下!つい先ほどの早馬からの伝達ですと、メアリー嬢が雷のようなものを出して暴走しているようです!」
「わかっている!」
俺の付き人の一人が、俺の馬に併走しながら報告してくる。
俺は相当に焦っていた。
報告の中にあった、王城を破壊する雷のようなものはきっと「魔王ルナ」によるものだ。
つまり、今王城ではルナが暴れていることになる。
何故なのかはわからないが、早く宥めて落ち着かせなければ、王城が跡形もなく消されてしまう。
「こんなときに限って陛下は俺に頼みごとをするし…!城にいれば早く対応できたものを…!」
タイミング悪く陛下に頼みごとをされ、ついさっきまでその頼みごとをこなしていた。
最近治安が悪く、警備隊では手に負えない犯罪者がいるということで、俺にそいつらを捕らえてくるようにとのことだった。
実際に探してみればあっさりと見つかるし、特に強くもなく難なく捕まえた。
これが本当に警備隊ではなく俺がやることだったのかと思ったほどだ。
そんなとき、早馬による報告が来たのだった。
その報告内容が、
【王城が雷のようなもので破壊されている】
すぐにピンときて即座に王城へと戻ることにした。
この世で雷を操る者など、一人しかいない。
「ルナ…早まらないでくれよ…!」
俺は最悪の事態を想像し、そうならないように祈りながら馬を走らせた。